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邪馬台国と黄泉の森 醍醐真司の博覧推理ファイル

著者:長崎尚志



創作中に失踪してしまったホラー漫画の鬼才を探してほしい。「女帝」漫画家を復活させるため、邪馬台国の謎を解いてほしい。映画マニアの少年を救ってほしい。そんな謎に、フリー編集者・醍醐真司が挑む短編集。
シリーズ第2作となる作品集。
まず、短編だから、っていうこともあるんだろうけど、前作『闇の伴走者』と比べて、醍醐の人間性が丸くなったような印象。
1編目『消えた漫画家』は、文字通り、失踪したホラー漫画家・椋を探す、という物語。真面目な漫画家であり、過去に体験した奇妙な出来事がその作風に現れているのではないか? という醍醐。椋が描いていた途中の作品、そして、デビュー作から、彼がどこへと言ったのか、ということを探し始め……。醍醐を引き立ててくれた編集長。そんな編集長を巡って椋に救われたこともある醍醐。だからこそ……。前作では、ただ偏屈な印象だった醍醐が、そんな過去を思い出すシーンとか、彼の人間味というのを強く感じた。
2編目『邪馬台国の女帝』は、かつて、日本書紀を題材とした女性漫画家・朝倉ハルナの担当となり、邪馬台国を題材とした漫画をやることになった醍醐。その最大の謎である邪馬台国はどこにあるのか、という謎を解くべく、取材旅行に行くが……
「邪馬台国はどこにあるのか?」という歴史上の大きなミステリ。そして、女帝と呼ばれるハルナとのやりとりの2つで構成。
様々な資料を用いて、邪馬台国はどこにあったのか? ということに迫っていく醍醐。しかし、その中でわがまま放題で、なおかつ、かつて日本書紀などを題材にした作品をヒットさせたとは思えないほどに知識のないハルナの態度。そこから対立もするのだが……。まぁ、ハルナの過去の作品は……というのは何となく予想がつくところではある。あるんだけど、そのことに腹を立てる醍醐と、その怒りに触れてのハルナ。何か、ハルナが憎めないキャラクターになっていくのが面白かった。
3編目は、映画マニアの少年の父の死について探る物語。仕事が全く長続きせず、妻にも見捨てられた父。しかし、少年は、そんな父が大好きだった。そんな父の死は自殺だったのか? 死の直前、彼が何をしていたのか? そして、死の間際に彼が手に入れた映画……。決して褒められた父親ではないかもしれない。けれども、ちゃんと息子のことを愛していて、メッセージを残していた、という結末は、作中でも一番、ハートフル。
そんな物語をまとめる4編目『闇の少年』。1編目で失踪した漫画家・椋が過去に体験した奇妙な事件の真相へと向かう物語。漫画の中で綴られていた話、椋の故郷などから、その時に起きていた事件へ。だが、椋のための調査なのに、肝心の椋の態度がおかしくなっていく。椋は何に気付き、何を隠しているのか? 時代的なものとか、そういう部分を背景にし、しかも重く、暗い物語なのは確か。けれども、作中、醍醐が鬱陶しいと思っている担当漫画家・ハルナとのやりとりとかで決意を固めていく場面とか、この作中で出てきたキャラクターがしっかりと物語に貢献していく、というのは見事。やるせない話ではあるのだけど、ちょっとは救いが出来た……のかな?

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