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夜の向こうの蛹たち

著者:近藤史恵



小説家の織部妙は、美人と評判の新人作家・橋本さなぎの作品に衝撃を受ける。そんな中、出版パーティーでその橋本と接点を持つことに。完璧すぎる橋本の姿に却って幻滅を覚える中、会場に現れた橋本の秘書だという女性・初芝祐の存在に心惹かれ……
愛憎ミステリというか、何というか……
最初に書いておくと、主人公である妙は、レズビアン。そんな彼女が、パーティーで出会った橋本さなぎの秘書・祐に惹かれて……というところから物語が始まる。興味を覚えた、というのはそうなのだけど、それは恋愛的な意味で、ということになる。そして、その中での奇妙な関係になっていく……という感じの物語。
まず思ったのが、思わぬ方向へと物語が転がっていったな、ということ。祐との距離を縮めたくて始まったさなぎとの交流。しかし、関われば関わるほどに覚えていく違和感。新人作家の収入がどのくらいなのか、ということを知っていれば秘書を? という疑問があるし、さなぎとのやり取りで感じるのは、作品の中身とのギャップ。さらに、ふと耳にしてしまったさなぎと祐との会話。一つ一つは些細かも知れないが膨れ上がっていく疑念。橋本さなぎ、という作家はもしかして……? そんな疑惑から物語が転がり始め、しかし、中盤であっさりとそこが判明して……
一つのテーマは、生きづらさ、ということなのかな? と思わずにはいられない。
妙は、冒頭に書いたように、女性しか愛せない、という人物。彼女もまた美人、と言われているが、そういった容姿などが注目されることは、却って彼女自身にとっては生きづらさの要因となってしまう。一方で、美人であるさなぎと、容姿に恵まれない祐。それぞれが持っている劣等感。すべてを手にすることは無理だ、という割り切り、っていうのはあるかもしれない。けれども、頭でわかっていても……
それでも、妙は何とかその中である程度の割り切りが出来る。しかし、さなぎと祐は……。それぞれとの関係の中で、片方に近づけば、その思いに共感し、もう一方に近づけば……。その危ういバランスの上で揺れ動いていく妙の心情と読んでいる自分の心情が一致していくような感覚を覚えた。そして、その結果……
終わり方は著者らしくあっさりとした形。ただ、自分のことがよくわからない、という妙の独白とは逆に、読者とすればきっと彼女は……。そんな余韻が残った。

No.5590

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