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コンサバター 大英博物館の天才修復士

著者:一色さゆり



世界最古にして、最大の大英博物館。その膨大なコレクションの管理をする修復士ケイン・スギモトの元には、様々な美術品が持ち込まれる。スギモトの助手となった晴香は、食えない性格のスギモトに振り回されながら、そんな謎に当たることになって……
デビューから、美術品とか、そういうものを題材にした作品を出し続けている著者。今作は、博物館が舞台と言うこともあり、純粋な「美術品」とはちょっと違うのだろうけど、路線としては近いと言えるのかもしれない。なんか、この辺り、昔読んでいた漫画『ギャラリーフェイク』に通ずるものを感じる連作短編集。
個人的に一番面白かったのは1編目の『パルテノン・マーブル』かな?
展示されていたパルテノン神殿のレリーフが、不届きな客によって落下し、壊れてしまった。しかし、よくよく見ると、そのレリーフは模造品。本物は、一体どこへ消えたのか? そして、いつ、本物とすり替えられたのか? こんな粗筋を見ると、犯人は? どういうトリックで? というミステリに思えるのだけど、その中で描かれる大英博物館という存在とか、そういうものが興味深い。
大英博物館だから当然、イギリスにある。一方、消えたレリーフはギリシャ・パルテノン神殿にあったもの。言うまでもなく、本来はギリシャにあったものを言い方は悪いが奪ってイギリスへと持ち帰った代物である、と言える。ある文化の粋を極めたものを奪ったのは良いことなのか? さらに、今回の事件では、その所有を正当化する「大事に守る」ということもできていないではないか、という話にもつながっていく。そして、その裏にあったもの……。博物館、それも地元の文化などを紹介するのではなく、世界的な……という存在の博物館の抱える根本的な意義などを考えさせられた。
ただ、2編目以降は、修復にまつわるアレコレという部分に特化していった印象。スギモトが自ら修復をする、というよりも専門家との交渉であったり、そういうのも含めて。滅茶苦茶な味音痴だったり、変な形で煽ってきたり、というスギモトのキャラクターなども前面に押し出され、ひっくり返しとかもあり、話の完成度はしっかりとしているのだけど、1編目ほどのインパクトはなかったように思う。
同時に、残念と感じたのは、この物語の中をつなぐ要素として、ロンドンで骨董商をしているスギモトの父が失踪し、その行方を追う、という要素があまり活きていないこと。あまり乗り気でないように見せて、手掛かりがある場所へスギモトが出張して……というのはあるのだけど、各編では別の題材が主になってメインにはならない。当然、最後のエピソードで……と思ったら、それもなんか、アッサリと見つかって、で終わってしまったし。
各編とも楽しめたのだけど、各編を結び付ける要素はそんなに必要だったのかな? という感じもした。

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