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奈落で踊れ

著者:月村了衛



1998年。数々の不祥事の末に発覚した「ノーパンすき焼き」事件。前代未聞の不祥事により、揺れに揺れる大蔵省。接待を受けていた89年入省組の面々は、省始まって以来の変人と呼ばれる香良洲に協力を依頼する。元妻で、与党の一角である社倫党議員秘書である理代子から、会員名簿の存在を聞いた香良洲は、フリーライターの絵里と共に、その存在を追って……
『東京輪舞』『悪の五輪』などに続く、ちょっと昔の日本を舞台にした物語。
なんというか、ピカレスクロマンというか何というか……
「ノーパンすき焼き」というか、「ノーパンしゃぶしゃぶ」事件が発覚した頃って、自分が高校生だった時代で、その何とも言えない言葉の響きとか、そういうのを覚えている。そして、その数年後に大蔵省という名前が財務省へと変化して……なんていうことがあったり、議員の自殺があったり、とか、全貌とか、そういうのはともかくとしても、色々なことがあったのは覚えている。
で、物語としてはそんな時代の大蔵省が舞台。出世レースが繰り広げられるキャリア官僚の中で、自分も接待を受けていた、という89年入省組。処分を受ければ出世は不可能。そこで、彼らは、香良洲を頼ることに。この時点で、彼らの心意気が……っていうのは明らか。香良洲自身、そのことに乗り気とは言えないが、大蔵省の財政健全化方針には疑問を持っており、それを打ち消すチャンスではないか、ということで要請を受けることに。そして、ヤクザ、総会屋との密会などをしながら動き始める。だが、その動きの前に、香良洲同様、この危機を利用して自分の派閥を伸ばそうとする主計局長・幕辺もまた動き出す。
事務次官にまで上り詰めるには「ワル」である必要がある。ワルというのは、そのために様々な手段を取り、実行していくこと。勿論、信念も必要。
大蔵省の方針を変えたい、そのためには……という香良洲。一方、事務次官を目指し、現在の方向性を推し進めたい。そして、劇薬と分かっていて、幕辺もまた、香良洲を利用しようとする。勿論、最後には彼を切る、という前提で……。この二人の関係性が面白い。どちらも、方針としては真逆。けれども、どちらも互いを利用しようと考え、その中で策を巡らせる。その結果、どちらもが相手の力量を認めていく。その辺りの関係性が面白かった。
その一方で、予期しない形で出会ってしまった暴力団員・薄田と、理代子の使える議員・錐橋の恋は……完全にギャグ。その辺りもあって、緊迫しているはずなのに、なんか、そうでもないような印象を与えてくれる。
そんなやり取りの結末……。これはどうとらえるべきか。香良洲の狙いはある程度、成功しているのだけどでも……。そういう煮え切らない印象になるのは、その後の歴史があるから、だろうか?

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