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ヒポクラテスの試練

著者:中山七里



浦和医科大法医学教室に現れた城都大附属病院の医師・南条。南条は、光崎に対し、知人の前都議会議員・権藤の死に不審な点があることを告げる。肝臓癌による死、とされているが、9カ月前に受けた検診では何の問題もなかった。高齢の権藤が、進行の早い癌で死ぬとは思えない。解剖すべき、という中、埼玉県警の古手川は、唯一の肉親である甥がある計画をしていたことを突き止める。だが、光崎の解剖で分かったのは……
光崎シリーズの第3作で、2020年12カ月刊行作品の1つ。
これまでのシリーズとは、ちょっと趣を変えてきたな、という印象。これまでの話は、最終的につながる部分があっても、各章で1つの独立した事件となっている、という形だったのだけど、今回は長編作品という形になっているため。
そのきっかけとなった話が冒頭の話なのだけど、解剖の結果、光崎が見つけ出した死因は寄生虫・エキノコックスによるもの。日本の、本州では殆ど感染者のいないそれに、なぜ権藤が感染していたのか? さらに、今度は、同じく肝臓癌で都の職員が死亡する。ここでも、解剖を嫌がる家族を押し切ることになるのだが、やはりエキノコックスが発見され……
先に、長編となって、趣が異なる、ということをかいたのだけど、今回は光崎の行動事態もこれまでと異なる。これまでは、とにかく解剖をし、死因を突き止めるのだ、という部分のみだった光崎が、今作では感染症の蔓延という状況にあり、それを食い止めねば、という行動に出ていくため。その中で、この二人の接点などから、数年前の、都議のアメリカ訪問というのを突き止める。だが、同行した都議たちは、その訪問について口を閉ざしていて……
今回の話って「解剖」「法医学」からはちょっと外れているんだよな。きっかけは、解剖だけど、そこから共通点を探し、やがて、光崎の弟子である真琴、キャシーは、訪米し、そこで彼らが何をしていたのか、というのを探る形へ。アメリカにおける差別問題、貧困問題へと話が移ろっていく。ちょっと予想と違った形の物語なのだけど、これはこれで、普通のミステリとして楽しむことが出来た。
ただ、こじんまりとまとまったかな? という感じもしないでもない。だって、東京都内でエキノコックスの感染者が見つかって、となったら、パンデミックか? とか、そういう恐怖感って絶対に出るはず。人々には対処法などが出るまでは……と言うのはともかく、事情を知っている光崎、古手川がそこまで焦った感じはないし、行政などの上層部が、という描写も全くない。なんか、落ち着きすぎ、という感じがする。この辺り、もうちょっと描写があっても良かったかな? というのは思った。

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