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パーフェクト・クオーツ 北の水晶

著者:五條瑛



米国国防総省直轄の情報機関に所属する葉山の元に届いた古いカセットテープ。そこには、日本と北朝鮮、二つの国に二つの家族を残したチョンが、北の「三号庁舎」について知る全てが残されていた。そんな中、日米の経済制裁に反発した北朝鮮による開城工業団地を封鎖したことにより、巨額の損失を出した韓国財閥グループの若き社長は日米にある取引を持ち掛ける。北の前将軍の、もう一人の後継者を亡命させる手立てがあるのだというが……
『スリー・アゲーツ』の続編として発表されていた作品。自分が『スリー・アゲーツ』を読んだのは07年のことで、実に13年ぶり。当初から予告されていたわけだけど、結構、比較的、最近の事件などが下敷きになっており、時間の経過を感じる。まぁ、あとがきを読むと、本当、紆余曲折があったみたいだし……
で、物語は2つの部分を中心に進んでいく。
一つは、チョンの残した情報にあった北の大物スパイという「石英」。外貨の獲得、というのが重要な北にあって、北に在住したことはないが、カタツムリという一種の女衒などを用いながら、多額の資金を北へと輸送していた、という。そんな石英の手掛かりを求める葉山は、川崎・堀ノ内で活躍していた「もう一人のカタツムリ」の情報を手に入れる。
もう一つが、韓国財閥の若き社長・重貞高平の手引きにより始まる北の将軍の子・ヨハンの亡命を巡る物語。北の実権は、既にヨハンの弟へと継承されており、政治的に微妙な立場にあるヨハン。しかし、そんな中、韓国大統領を巡る疑惑の中で、発起人である高平が窮地に陥っていく……
『スリー・アゲーツ』もそうなのだけど、父と子、という関係性が強く印象に残る。北朝鮮の将軍の子として生まれ、VIPとして育ったヨハン。北の実権は変わり、世界情勢が変わっても、自分の置かれた状況を認識できないままに進んでいく。高平は、財閥の御曹司として生まれ、支配者である父のやり方、韓国の閉鎖的な社会に反発を覚えながら財閥を動かそうとし、しかし、その父、社会の渦へと飲み込まれていく。さらに、子の幸せを望み、養子へ出した「もう一人のカタツムリ」の想いと、しかし、その残酷な運命。そんな面々を見ながら、自らのルーツとも向き合うことになる葉山……。南北に分かれた朝鮮。そして、日本、アメリカと言った国際社会のうねりの中で翻弄されていく人々の苦悩、矛盾……突き詰めていくと、そういうものが主題になっているように感じる。
物語の結末は、近年に起きた2つの事件をモチーフにしているだけに、予想通りの形で決着はしてしまうのだけど、国際情勢の変化とか、そういう中で翻弄され続けた人々の姿が印象に残った。

No.5601

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