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神話の密室 天久鷹央の事件カルテ

著者:知念実希人



アルコールが一滴もないはずの病室で泥酔してしまった人気小説家。キックボクシングのタイトルマッチ。勝利を手にした瞬間、リングで死亡した新王者。密室状態での事件と、その背後にあった思いもよらぬ「病」とは?
と、2編を収録した短編集。
あれ? 「推理カルテ」が短編で、「事件カルテ」が長編じゃなかったっけ? と、タイトルを見て違和感を感じたり。ともかく、天久鷹央シリーズの第11作。今回は2編とも、タイトルの通り、密室状態で起こった謎に挑む形になっている。
1編目『バッカスの病室』は、急性アルコール中毒で搬送された小説家。ストレスによって飲酒量が増加し、アルコール依存症の疑いがある、ということで入院することに。ただ、仕事もあるため病室にパソコンなどを入れて執筆も。ところが、そんな病室でなぜか、その作家は泥酔状態で発見されて……という話。
勿論、病室であり酒があるわけではない。持ち込むこともできないようにしてあった。それなのになぜ? そんな不可思議な状況について、天久は、小説家のカルテ、そして、その前後の行動から、ある病を抱えていることを見つけ出す。アルコールがどこにあったのか? その病の正体の意外性と、鷹央の対処のインパクトが見事。ただ……冷静に考えると、わかりやすい痕跡が残っているのでは? とも思ったり。
2編目『神のハンマー』。冒頭に書いた通り、キックボクシングの試合後に急死した新チャンピオン。脳内での出血などはなく、心筋梗塞と思われるのだが……。普段は、早い段階でKOを取る審判がなぜかそれを取らなかった理由。試合前後の、チャンピオンの言動。そこから……
謎解きとすれば、それしかない、というのがわかるのだけど、むしろ、その中での鷹央の決断が印象的。ヒントなどを集め、真相を見抜いたものの「降りる」という鷹央。そして、そのヒントから真相へと向かう小鳥遊。これまで、散々、相手の気持ちなどがわからない、という鷹央の変化。そして、小鳥遊に対する信頼感。そういうものが印象に残る。ただ、いくら本人が……と言っても、この真相は身勝手……という気もしてしまうんだよな……
分量としては少ないけれども、意外性、安定感。そういうのは流石、という出来の一作。

No.5604

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