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虜囚の犬

著者:櫛木理宇



現在は妹の専業主夫として暮らしている元家裁調査官の白石。そんな彼は、友人である刑事の和井田から、かつて担当した元少年・薩摩治郎がホテルで殺害された、ということを伝えられる。しかも、その薩摩治郎の自宅には、鎖で繋がれたやせ細った女性が……。かつて「ぼくは、犬だ」と言っていた治郎。そんな彼が、なぜ女性を監禁、虐待していたのか? 白石は調査を開始するが……
いろんな意味で著者らしい作品だな、という印象。
ホテルで殺害された薩摩治郎。支配的な父親に、すべてを奪われ、ただただ、罵倒され、暴力を受けて育った少年。受動的な形で犯罪に関わり、白石の聞き取りなどでも、ほとんど何も語らない。そして、「ぼくは犬だ」とだけ語っていた少年。事件後は、高校を辞め、屋敷の中の離れに引きこもっていた、という。そんな彼がなぜ、女性を監禁、虐待していたのか? そして、なぜ、殺されたのか?
性格破綻者と言ってよいであろう暴力的な父親。そんな父親の死にも不可解なところがある。そして、そんな彼が、虐待をする中で見せた、何かに脅迫されているかのような行動。一体、何が彼をそう仕向けたのか? そんな中で浮かび上がってくる父親が行った不可解な土地乗っ取り事件。それは何か関係しているのか?
薩摩治郎という人物が、どのような存在だったのか? その話を掘り下げていく中で浮かび上がってくる、薩摩家を巡ってのアレコレ。不可解な事件を巡って調査を進める中で同時に、白石が家裁調査官を続けられなくなった過去の事件を思い出さずにはいられない。心理学などを学び、人間の行動などについて知っていたと思っていたのだが、しかし、その事件で白石自身が自分は、少年たちのことを理解できていたのかわからなくなってしまった。そして、薩摩治郎についても……。虐待の連鎖とか、そういう部分で理解できているように思いつつも、しかし、果たして本当はそうなのか? という疑念が付きまとう展開は非常に読みごたえがある。
……のだけど、中盤、唐突に白石とは別視点での物語が入り込む。そして、事件の本当の構造が明らかに。白石の視点だけではなく、という意図はわかるのだけど、中盤にいきなり、だったのでどうにも唐突感がある。しかも、真相に至るまでの人間関係が複雑すぎて、読んでいて「?」と思えてくる部分が出てきての着地だったのが、ちょっと……という感じに。サプライズ、というよりも、無理やりにまとめた、という感じがしてしまった。終盤を活かすためにも、もうちょっと工夫が欲しかったかな? という風に感じる読後感だった。

No.5626

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