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楽園とは探偵の不在なり

著者:斜線堂有紀



数年前、突如、世界に降臨した「天使」。二人以上を殺害した者は、「天使」によって即座に地獄へと落とされる、という世界が出来上がった。探偵・青岸焦は、天使を崇拝する富豪・常木に誘われ、彼の所有する常世島を訪れる。ジャーナリスト、政治家、天国研究家、医師などが集まったその島で、青岸を待っていたのは「起きるはずのない」連続殺人だった。
本格ミステリ、という触れ込みで、実際、クローズドサークルでの連続殺人は起こるのだけど、そこが主眼なのかな? という感じはしたかな?
とにかく、物語の最大の特徴は、その世界観。「二人以上の人を殺したものは地獄に落とされる」という部分。そのため、連続殺人鬼というような存在は、物理的に存在することが出来ない。さらに、この「殺す」というのは、故意、過失などを問わない。例えば、自分では毒と思っていないものを誰かに食べさせて二人以上の人を殺してしまった。こういうケースもまた、地獄へと落とされてしまう。その一方で、殺人の道具となる物を開発したりすることは、殺人としては見做されない。
そんな状況の中で起きた殺人事件。一人が殺された時点で、もう次はないだろう、と見るが、しかし……
正直なところ、この理屈自体に結構、穴があるし、また、二人以上を殺す方法というのもあり得る(これは、真相としても語られる) その上で、トリック自体は結構シンプルであるとも言える。その部分だけだとちょっと物足りないかな? と。
ただ、それ以上に、この世界観というのが印象に残る。二人を殺せば地獄行き。言い換えれば、一人までであれば許される。さらに、「どうせ殺すなら」で多くの人々を巻き込んでやろう、という自暴自棄になった存在の事件も頻発。かつて、数々の難事件を解決した青岸だったが、そんな事件の中で、かけがえのない仲間たちを喪ってしまった。自分がしていたのは何だったのか? そもそも、探偵がいる意味とは? そんな想いが常に付きまとう。しかし、そんな中で……
本格ミステリというのが強調されている割に、その部分はちょっと弱い。けれども、その特殊な世界観と、だからこその青岸の悩み。そういう部分の読みごたえがあった。

No.5629

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