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オーバーライト2 クリスマス・ウォーズの炎

著者:池田明季哉



音楽活動を再開したヨシ。そんな彼の元にやってきたのは、かつてのバンド仲間でボーカリストのネリナ。時を同じくして、ブリストルの街では、ミュージシャン・カブリエルの言葉もあり、グラフィックの排斥運動が巻き起こる。そして、ブーティシアのグラフィックも何者かによって消されてしまい……
グラフィティVS音楽、という言葉が帯にあるけど、こういう風に展開するか……
物語としては、ヨシを巡ってのブーティシア、ネリナの争いと、ミュージシャンのぶつかり合い、というようなところが軸になるだろうか。
そもそもの、ヨシが日本を離れ、音楽から離れた理由。それは、ネリナの発した「魂がない」という言葉。そういったこともあり、ヨシはネリナから距離を取ろうとするわけだけど、突如現れたネリナは、日本にいたころと同じくヨシを振り回す。そして、ネリナからすれば、ヨシを奪ったブーティシアに対し、対抗心を燃やす。勿論、ブーティシアもまた、ヨシから音楽を奪った存在としてネリナを……。そんな中、ヨシは、ネリルとともに、ガブリエルの新たなプロジェクトに参加することに……
ヨシに対して言われた「魂がない」。それは、何を伝えたいのか、というようなビジョンがない、ということ。ガブリエルもまた、そのことを伝える。しかし、一方で、ガブリエルが見抜いたのは、そんなヨシは周囲が引っ張り、それをサポート、そこに追いつきたい、というような意思がある、ということ。決して、それが悪いわけでもない。それこそが大切な仲間、ともいえる。しかも、ガブリエルとのやり取りの中で、ネリナもまた、何者かになるため、必死にあがいている、ということを知ることになる。ブーティシアら、ブリストルで出会ったグラフィティ・クルーと同様に。
何を伝えたいのか? それって、確かに創作活動において、大切なことだとは思う。思うけれども、しかし、それだって色々な形がある。明確にこれ、という場合もあれば、とにかく、自分の憧れやら何やらがあり、そこへついていきたい、追いつきたい、なんていうこともある。後者も決して否定されるべきではない、というのも大切なことだろう、というのを思う。
そして、その一方でのグラフィティとの対立。これ、グラフィティの負の部分、とでも言うべきところを突いた話と言える。反抗の文化とか、色々という。けれども、勝手に他人の所有物に絵を描く。これって、ただの破壊じゃないのか? というのはヨシも認めるように正論ではある。そして、ガブリエルが過去に体験したことと、ブーティシアが見落としていたこと、という現実は確実にあるだろう。
……ただ、個人的には音楽はそんなことはない、はどうか、って思いもあったりはして(笑) 確かに、他人の家の壁とかを傷つけはしない。でも、ストリートミュージシャンとかが歌っているのを聞いて「うるさい!」と思ったことはあるからなぁ。静かな環境が欲しいとき、近くで大声で歌うストリートミュージシャンがいる、っていうのは「静かな環境」を破壊しているわけで……と、物語に直接関係のない想いなんかも覚えたり(笑)
ただ、ヨシの、「魂がない」を巡っての話から、創作の中にあるもの。そして、その対決を通して、両者が分かりあう……というところへ、しっかりと物語をまとめ上げるのは見事。2巻も完成度が非常に高く、満足感のある読後感だった。

No.5631

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