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空想クラブ

著者:逸木裕



幼いころ、祖父から「見たい風景を見ることができる」力を貰った空想好きの中学生・吉見駿。そんな彼は、かつて、いつも一緒にいた仲間の一人・真夜が川で溺死した、という一報を耳にする。葬儀の帰り、彼女が事故死したという河原を訪れた駿は、そこで幽霊のような状態でいる真夜と再会する。真夜は、夜の河原で少女を助けようとして溺死。しかし、その少女の姿は見えない。謎が解けない限り、河原から出られない、という真夜のため、彼女の死の謎を解こうとするが……
著者の作品はデビュー作から追いかけているけど、かなり色々な作風を持っているんだな、というのをまず思ったり。
物語の中心にあるのは、真夜の死に関する謎を解く、ということ。しかし、それには駿一人だけの力では不可能。そこで、駿、真夜ら、いつも一緒にいた「空想クラブ」の面々の力を借りて……ということになるのだけど……
空想好きで、冒頭に書いたような力を持っている駿。今でも駿と仲が良く、運動神経抜群で面倒見の良い隼人。そして、博識で、好奇心の塊で、気になったことがあると猪突猛進な真夜。最初から、三人は協力的。けれども、あと二人は……
小学校の頃の仲良しグループ。しかし、中学へ進学。文字通りにバラバラになり没交渉に。その中で絵が上手く、しかし、頑固だった圭一郎は、中学生になり、ある意味でエキセントリックな行動に。また、周囲への気遣いが優れていて、真夜の親友だった涼子は、ある時から真夜と距離を置き、不良グループと行動を共にするように……。そんなかつての仲間の協力を得るために動き出す。
進路が分かれ、没交渉になる。そして、その中で以前のイメージとは全く違う方向へ。これって、ここまで極端ではないにせよ、誰でも経験していることじゃないかと思う。そんなかつての仲間を集める最中で、彼らの抱えている問題を……という駿のやさしさ。しかし、一方で、自分が「強い」と思っていた真夜も、決してそうじゃなかった、という発見。何かノスタルジックな雰囲気と、でも、真夜は死んでしまった、という残酷さ。両方が混在した物語の雰囲気が何よりも印象に残った。
そして、その真夜の死の真相。これは、とことん……といって良いほどに残酷なもの。真相がわかったから……と言って、じゃあ、と納得できるような類ではない。その中で、でも……という希望へ繋ごうというまとめ方も良かった。多分、キャラクター設定とかを入れ替えれば、駿の能力というファンタジー的な要素を省いても終盤までの話は作れると思うのだけど、この結末だけは、この設定があったからこそ、だと思う。
とことん残酷。けれども、かつての仲間たちと一歩を踏み出す希望を見いだせる結末。その両方が上手くかみ合った作品だと思った。

No.5634

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