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早房希美の謎解き急行

著者:山本巧次



大手私鉄・武州急行電鉄に勤める早房希美。営業企画部という彼女の部署には、社内の各部署から様々なトラブルが持ち込まれて……
という形で綴られる連作短編集。全5編を収録。
最近は、すっかり鉄道を題材にした作品ばかりを書いている著者だけど、考えてみるといわゆる鉄道会社の社員などを題材にした「お仕事」作品は初のような気がする。著者自身は、鉄道会社に勤めていた、ということで一番、得意そうな気がするのだけど……という意味では意外。
ただ、お仕事小説と言いつつ、かなり殺伐したエピソードも多い、という印象。
例えば1編目。秩父の踏切で、踏切内に侵入という警告が発せられることが頻発。しかし、緊急停止をしても、そこには何もない。現地に赴いた希美らは、そこで車椅子生活をする老婆と、近所に住む彼女の甥と知り合う。やがて、踏切の警告は甥の飼っている犬が……ということが判明するのだけど……。事件の在り方としては結構、オーソドックスな話ではある。その上で、思ったのは、油断みたいなことはあるだろうけど……これって法律とか、そういう面ではどうなのだろう? ということもあったりはしたのだけど。
反対に2編目は、駅の階段から転落した男性。当初は、何者かに突き落とされた、と言っていたのだがすぐに撤回。しかし、そのことが気になる希美は、事件を調べて……。いきなり文字通りの犯罪行為か? と思ったところから、その男性の行動に関する疑惑に変わり、しかし、本当は……で、温かい結末へ。物語のカラーが次々に塗り替わっていく様が印象的だった。さらに3編目はストーカー騒動が二転三転して……というものだし。
鉄道会社らしい話、という意味では、5編目かな? 特急の発売されていない席に、毎日のように特急券なしで乗っている女性。最初は、知らなかったのかな? くらいで済むけれども、連日と言うことは何かあるに違いない。その一方で、他の特急でも同じようにしている人がいて……。そもそもの話として、自分は特急でも何でも、「最短で突くための手段」という考えがあるので、このように利用する、という発想そのものがないので完全な盲点。そして、そういう目的で、としても仕組みとか物言いとかですれ違いへ。ダイヤ改正とか、相互乗り入れとか、そういう近年の鉄道会社で行われている施策は、自分のように「最短で」という人間にとって大きな利益になっているのだけど、その分、システムとかが複雑化しているんだな、というのを強く感じさせる話だった。
最初に書いたように、結構、殺伐とした話とかが多い、っていうのはある。ただ、鉄道に乗る目的とか、そういうのが色々とあり、当然、周辺に住んでいる人との関係などもある。鉄道っていうのは、そういう様々な人の思惑が重なる場所となりえるのだな、というのを強く感じた。

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