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その旅お供します 日本の名所で謎めぐり

著者:綾見洋介



「その旅、ついていっていいですか?」 神楽坂のバー『トラベラー』の常連である歴史学者・梓崎は、バーで知り合った客の旅に同行する。そして、その旅先で起こる不思議な出来事を解決する。
という連作短編集。全5編を収録。
バーで、旅の話をしている客の話を聞き、「自分も一緒に行っていいか?」と聞く梓崎。よくよく考えると、この上なく凄い話の入り方だと思う(笑)
ただ、結構、話のバラエティとかが凝っているな、というのも同時に思った。
1編目『厳島神社』。旅先で出会ったボランティアガイドから、東京に住んでいたころ、よく見ていた桜の写真を撮ってくれないか? と頼まれた塔子。しかし、その住所にあったはずの桜は切り倒されていた……。しかし、東京に行った孫は切り倒された後なのに桜があるかのような写真を。一方で、厳島神社近くの海岸では、不思議な穴が……。謎、としては日常の謎のようなテイスト。その中に、孫の想い。それが穴の存在にも……という温かい結末が綺麗。
2編目『石舞台』。かつて、石舞台で不可思議な出来事を経験した清史。そんな彼には、不安なことがあった。それは、遠距離恋愛中の恋人が浮気しているのではないか、ということ。石舞台で、恋人が男と会う約束をしていることを知り、確かめるために梓崎と向かうのだが、かつてと同じような出来事が起きて……。こちらは、密室からの消失という、本格ミステリ的な謎が魅力。……もっとも、その真相なら、そんなトリックを使わずとも……と思ったのは秘密。
逆に、上司と合わずに会社を辞めた女性を探して……という4編目『鹿児島』は、思わぬ展開が持ち味。薩摩切子が好きで、という女性。その女性は、確かに薩摩切子を愛していた。しかし、旅人が語っていたことと、旅先で聞いた話の中に相違点が出てきて……。ある意味、冒頭に書いた無茶ぶり的な設定を逆手に取ったような構成が活きたエピソードと言えるのだと思う。
様々な土地、舞台を活かすような謎。そして、その中で起こる出来事もバラエティに富んでいる。作風としては、あっさりと読めるようなものなのだけど、かなり色々と盛り込んだ労作なんじゃないか、という気がする。

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