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異世界誕生2007

著者:伊藤ヒロ



2007年、夏。中学一年の嶋田チカは、幼馴染の藤岡キョウヤから長らく入院していた妹のハルナに会ってほしいと頼まれる。久々に会ったハルナは、やせ細り、退院したとは思えない状況。そんなハルナに、死んだ兄の原稿を元に母が書いた『タカシの冒険』を聞かせるとハルナは大喜び。ハルナに頼まれ、チカはその続きを考えることに。しかも、困惑するチカに、キョウヤが告げたのは、ハルナはもうすぐ死ぬ、ということで……
『異世界誕生2006』の続編。ただ、前作の中で綴られた『タカシの冒険』が刊行され、賛否両論ながらも売れている、とか、そういう前提はあるものの、カラーは大分、異なるな、というのをまず思う。
あとがきで、著者が述べているテーマは『理想の読者』。確かに、チカが物語を聞かせる相手であるハルナは、常にチカが語ってくれる物語を心待ちにしてくれ、そして、何よりも楽しんでくれる存在。そういう意味では間違いなく『理想の読者』なのだろう。けれども……
今回の話って創作する側と、それを享受する側のギャップみたいなものが前面に出ていると思う。
そもそもが、チカは物語を綴るつもりなんて一切なかった。母が書いたもののも決して喜ばしいとは思っていない。まして、チカが聞かせる相手・ハルナは間もなく死んでしまう、という状況。そんな状況で創作する、っていうのはどう考えても苦痛そのもの。しかし、ズルズルとそれを続けざる得なくなり、さらにキョウヤを巡ってのトラブルだとかまで発生してしまって……
自分は完全な一読者だから、作者の苦しみとか、そういうものはわからない。だからこそ、好き勝手なことを言いつつ、「あの作家の新刊出ないかな?」なんていう言葉を放つ。一方で、作者は読者の好みとか、そういうのを計算したりしている。無論、ギャップが大きくなり過ぎて……なんてこともあると思う。それでも、読者は待ち続ける。前作は、書く側の苦しみとか、そういうものをピックアップしたように思うけど、今作は作者と読者の関係性というのを強く意識せざるを得ない話だった。
自分なんかは、結構、浮気者なので、「この作者の新刊が出ないならこっち」みたいなことをしちゃうわけだけど、どんなに作者が苦しんでいても一途に作者を待ち、そして、それを素直に楽しむ。そういう存在であるハルナというのは、確かに、『理想の読者』なのかも知れない。

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