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SCIS 科学犯罪捜査班3 天才科学者・最上友紀子の挑戦

著者:中村啓



警視庁の警視正・小比類巻は、電車の中で亡くなったはずの妻と瓜二つの女性と遭遇する。その女性・黛美羽は、他にも自分とそっくりな女性がいる、というのだが、その美羽が何者かに殺害されてしまう。そんな事態に戸惑う中、遺伝子操作の研究をしていた大学教授が、ミイラのような死体で発見され……(『編集される生命』)
からの3編を収録。
という風には書いたのだけど、物語は大分、小比類巻の妻、そして、一種の宗教団体であるボディハッカー・ジャパンとの関わり、というのが強く押し出されてきた、というのを感じる。何しろ、物語のテーマというのが、それぞれ、「生命を作り出す」というような部分が共通しているわけだし。
で、粗筋で書いた『編集される生命』。遺伝子操作の研究者の異常な死。彼は、遺伝子ドライブを研究しており、繁殖できない蚊を作り出していた。そんなとき、ある意味で、ライバルと言える殺虫剤メーカーの研究者が彼に接近しており……。この話は関連してはいるけど、ちょっと独立した話。ただ、その中で遺伝子操作で生物を作り出す、ということの是非。遺伝子操作、というと悪いような印象もあるが、例えば、野菜でも、家畜でも、ペットでも、人間は生命を作り出してきた。それは否定されるべきものなのか? ある意味、ジャブ的な問題提起と言えるかもしれない。
そして、物語はいよいよ人間へと……。2編目『同じ夢を見るクローン』は、親は違うのだが、全く同じ顔をした少年が9人も失踪する、という事件。さらに、3編目『移植される記憶』は、臓器移植によってドナーの記憶が……という話。
それぞれの話は、確かに独立した話ではある。あるのだけど、この巻に至っては、話が進むにつれ、どんどんとテーマが絞り込まれていく印象。動物などの遺伝子操作が……というところから、では、それを人間でやるのは? さらに、それを利用して……というのは? それぞれのエピソードについて、実際にはそれは不可能だろうというレベルではある。あるのだけど、その中で綴られる倫理的な問題提起というのが非常に印象に残る。
そして、その中でボディハッカー・ジャパンという存在もクローズアップされてくるのだけど、それ以上に気になるのは小比類巻の想い。妻の死が受け入れられず、その遺体を冷凍保存し、治療ができるまで……と言うことをしている小比類巻。その立場って、人間のクローンとかを……というのと、方向性としては同じにしている、ともいえる。その時に、彼がどう動くのか?
物語としても、いよいよ煮詰まってきた、というのを感じずにはいられない。

No.5656

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