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揺籠のアディポクル

著者:市川憂人



外界から処断された無菌室。そこで暮らすタケルの、唯一の同居人は、隻腕義手の美少女・コノハ。医師である柳と、看護師の若林。わずか四人しかいないクレイドルと呼ばれるそこでの平穏な日々。だが、大嵐の夜、貯水槽により通路を破壊され孤立してしまう。そして、不安と焦燥を胸に抱えて眠るタケルとコノハ。しかし、タケルが目覚めると、コノハは胸にメスを突き立てられて死亡しており……
物語のシフトチェンジとでも言うべきものが凄いな。
物語は3章構成で、第1章はタケルとコノハが過ごす無菌室での日々。当初は折り合いの悪かった二人。しかし、だんだんと打ち解け、同じ場所で同じ時を過ごす仲間として時間を過ごす中、タケルはコノハに対しての想いも抱くように。そんな中での嵐と直後の事件……。無菌室で、どのようにして事件が起きたのか? そして、コノハの遺体には……。ここまでは、病棟の部屋の配置がどうとか、そういう形のまさしく本格モノという様相。ところが、タケルがある結論に至って……
で、物語は急展開。それまで、無菌室の中だけで生きてきたタケル(ひいては読者)が考えていたのとは全く違った世界。自分たちは、一体、どこで暮らしていたのか? 自分たちは何なのか? そして、そもそも、この病院の秘密は何なのか? と一気に物語が変化していく。そして、そういった諸々の先にタケルがたどり着いたものは……
本格ミステリか、と思わせる序盤から始まって、全く違う方向へとひた走りだす物語。舞台の秘密が明らかになり、そして、再び、コノハは何故死んだのか? という結論へと収束する。物語の舞台、様相の大胆過ぎるほどの変化に何よりも惹きつけられた。場合によっては、期待していたのはこれじゃない、というケースもあるかも知れないし、強引さというのはある程度は感じる。けれども、徹底的に作りこんだ世界観だからこその物語であることは間違いないと思う。

No.5660

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