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アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿

著者:澤村伊智



駈け出しの貧乏ライター・湾沢。彼が契約をしている弱小WEBマガジン『アウターQ』には、クセの強い面々が揃っている。そして、そんな彼らと取材に向かう湾沢の周辺では、奇妙な事件が次々と起こって……
という連作短編形式の物語。
個人的に著者の作品って、怪奇現象とかのようなホラーの要素と、社会問題などを扱った社会派ミステリ的な展開のハイブリッドというのが持ち味なのだけど、その意味で、本作は両者がこの上なくしっかりと融合しているんじゃないか? というのを感じた。
例えば1編目『笑う露死獣』。公園の遊具に書かれている落書き。その落書きが意味している物を追いかけてみると……。小学生くらいの子供が解けるような暗号。その解読を繰り返していく中で辿り着いたもの……。ここにホラー要素はない。けれども、その事件に端を発したと思われる事件と絡んでの後味の悪さ。導入篇として、作品のカラーを強く印象付けた。
逆に2編目『歌うハンバーガー』は、何とも言えない後味が印象的。精神疾患を患って休業中だったライターが取り組んだのは、入りづらそうなハンバーガー店の取材。印象通りにマスターは変な人物。ガラガラなのに、店は指定席が沢山。そんな店の取材から、彼女は再び……と思うのだが。こちらは完全に怪奇現象と関わった話。しかし……と思った矢先の思わぬ終わり方のモヤモヤ感が凄く残る。
そんな中で、湾沢の過去なども見えてくる『目覚める死者たち』。かつて、花火大会の日に起こった歩道橋での事故。それをモチーフとした怪談話について取材をした湾沢。かつての現場を訪れるときによみがえるフラッシュバック。一方で、その怪談話を語る人物の不可解な行動。怪談、噂話と、それを利用しようとする思惑。それぞれ別個の話として成り立つはずだけど、その双方が繋がってという形での結末が印象的だった。
そして、そういった話が、最後の『映える天国屋敷』『涙する地獄屋敷』で繋がっていって……
最後の2編を除いて基本的には別個の話と言える。しかし、良いか悪いかは別としてメディアというものが生み出す波紋。時にメディアの側がこうしよう、という意図をもって広がるし、場合によっては全く思ってもみなかった結末へと繋がっていく。物の見方は一人ひとり違う。しかし、人の視点が一つしかないように、人が取材をして書く以上、メディアもまた同じような形になってしまう。しかし、メディアは公平に見ている、という錯覚を伴う……
最後に明かされた真実。そして、振り返っての、それまでのエピソードのその後というまとめを見ると、そんな怖さ、というのを描いた作品でもある、と感じられた。

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