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真夜中のたずねびと

著者:恒川光太郎



全5編を収録した短編集。一応、収録されている話の中に、共通する人物は登場している。しかし、各エピソードの繋がりそのものはないので、純粋な短編集と言っていいのかな? という風に思う。
著者の作品というと、日常のすぐ傍にある異世界、異空間というようなイメージを持っているのだけど、本作の場合、ファンタジー的な要素が薄く、現実と異世界との狭間が曖昧な印象。でも、曖昧だからこその不気味さとでもいうべきものが強くなっているように感じた。
例えば1編目『ずっと昔、あなたと二人で』。震災孤児であるアキは、一人の老婆に拾われる。その老婆は、アキのことを「天使」と呼び、色々な仕事を手伝わせる。そして、そんな老婆は、占い師として活躍していた。そんな老婆が大切な仕事として、アキに役割を授けるのだが……
老婆がアキに与えた仕事。それは、ある場所へ行き、荷物を持ってくる、というもの。その荷物とは……。それまで、文字通り一心同体、母と娘であるかのような関係であった二人。しかし、その荷物の正体と、その荷物を届けた後には……。常に余裕のあった老婆の、その余裕が取り除かれたときに見える焦り。人間にとっての余裕とか、そういうものがどういうものなのか、というのを感じた。
2編目『母の肖像』。会社で地道に働いている一馬。そんな一馬の元へ、母から捜索を依頼されたという探偵が訪れる。母が探している、ということで、母の元へ行くのだが……。文字通り、母親の人生を描いた話。人でなしの父と、そんな父の口車にのせられ、常に振り回され、転落していった母。そして、その行きついた先。このエピソードにファンタジー要素は皆無。ただ、愚かとしか言いようのない母と、しかし、その中にある狂気すら感じさせる意思の怖さが印象に残る。
5編目『真夜中の秘密』は、会社員をしながら山荘のレンタルをする泰斗は、ある日、その山荘の近くに何かを埋めている女を発見する。その女と格闘の末、女を倒してしまうのだが……。ごく普通の青年であった泰斗が、ひょんなことから、犯罪と言えることを行ってしまう。幸いにも殺しはしなかったものの、自分がやっていたことは女と同じこと。そして、女とのやり取りの中で思うこと……。ごく普通の人が、ふとしたことで道を踏み外してしまう。そんな怖さ、弱さ、そんなことを感じさせる。
で、読んでいる最中は、それぞれ独立した話だと思ったのだけど、こうやって感想を書いていて思ったのは、もしかしたら繋がりも? なんてことを思うようになっていった。直接、話が繋がっているわけではないけど、でも、こことここを……。そういう余韻が残るのも、この作品集の魅力……なのかな?

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