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鏡館の殺人

著者:月原渉



海運業で財を成した黒澤家。その妾腹の少女たちが暮らす「鏡館」は、左右対称の新旧の館に、48枚の姿見が設置されている。富豪である父は、年に一度、館を訪れ、政略結婚のための娘を選び出す。今年も、そんな日がやってきた。折からの雨で、館への道が閉ざされ、従業員が減る中、鏡面に不吉な声が浮かび上がり……
シリーズ第4作。
館を舞台とした本格モノ、というような印象の強いこのシリーズなのだけど、今回はあまり本格モノという感じではなかったかな? というのが第一印象。粗筋で書いたように、姿見の鏡がたくさん置かれた館。その鏡に不吉な言葉が浮かび上がり、そして、当主である少女たちの父が殺害される。さらに、第2、第3の事件が発生。しかも、密室だったり……というのはある。あるのだけど、その一方で、語り部である澄香が感じる双子の姉妹のこと、とか色々と詰め込まれている。
ただ、本格モノ、というには、ちょっとアンフェアな感じがするトリックだったりとかで、ちょっと散漫とした印象を受ける部分がある。
その一方で、この時代の「少女」、それも、妾腹とか、そういう立場の女性が置かれた状況っていうのが印象に残る。資産家の家の娘である、と言ってもあくまでも妾腹の子。自由があるわけではなく、ただ、家が繁栄するための道具としてしか見られていない。父は年に一度しか現れず、その場で唐突に結婚を言い渡される。そして、断れば、文字通り、無一文で放り出されてしまう。元々、うっすら感じていた道具という言葉が、文字通りに現実的に感じられるとき……
同じ父の子、と言っても、思いも性格も人それぞれ。そんな少女たちの想いの交錯。それがもたらした結末。
本格モノとしては、ちょっと物足りなさも覚えたのだけど、明治時代の、弱い立場の少女たちの置かれた状況。そして、その中にもあるプライド。そんなものを感じた。

No.5682

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