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著者:伊岡瞬



最愛の妻を殺され、奥多摩分署で無気力に過ごしていた真壁。2週間後に退職を控え、最後の出勤日となった日、その管内の山中で女性の全裸遺体が発見される。その遺体には、痣のような傷があり、それは、殺された妻につけられたものと瓜二つ。そして、次々と起こる事件だが、そこには、妻を彷彿とさせる痕跡が……。妻を殺した犯人は死亡しているはず……
著者の作品を読んだのは、久々だったのだけど……4年ぶりだった。……というか、前回読んだ『代償』も8年ぶりで、どれだけ読んでいないんだよ、という感じではあるのだけど。とは言え、面白かった。
粗筋でも書いたのだけど、妻を殺され、警察を退職することにしていた真壁。そんな矢先に発見された全裸遺体。最後の出勤日だった、ということもあり、静観の予定であったが、捜査一課時代の上司に無理やり、役割を与えられ、後輩の宮下と共に捜査に参加せざるを得ないことに。そして、気づく妻の遺体との共通点が。妻の死の真相を知るためにも、その点については隠したまま捜査に加わることになっていく。
とにかく、この真壁の置かれた状況、っていうのがスリリング。
最初の事件から出てくる、妻の死との共通点。しかし、身内の事件では外されてしまうため、それを言うことは出来ない。だからこそ、それを隠す。そして、次の事件が発生することで、さらにその確信は強まっていく。そして、さらに、失踪してしまった友人という事件にも繋がりが見え始め、ますます、真壁の秘密は増えていってしまう。自分の近くに犯人が? しかし、周囲に漏らすわけにはいかない。そんな綱渡りの状況と、しかし、そういう状況に立たされたことで、却ってどんどん生き生きとなっていく真壁。そのある意味では、相反する心理というのも魅力と言える。
そして、そんな中で、真壁を支える側と言える上司の久須部、部下の宮下。強面ではあるが、面倒見の良い久須部と、一見、頼りなく見えつつも様々な知識があり、ひょろっとした見た目なのになぜか大食漢という宮下のキャラクターが美味いこと物語を盛り上げているのも見事。人によっては、もっと胃が痛くなるような展開でも良い、っていうこともあるかも知れないけど、スリリングな中に、人情味、ユーモアなどを取り入れることで読みやすくなっているんだろうと感じる。
正直なところ、その犯人に関しては、どうしてそういう歪んだ形になったのか、という説明はあっても、理解とか、納得とか、共感とかが出来る存在ではない。ただただ、やりきれなさ、というのが残るだけ。その部分についてのモヤモヤがあるのは間違いないところではある。でも、この事件の過程を考えると、それも致し方がないことなのかもしれない。

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