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女子高生声優・橋本ゆすらの攻略法

著者:浅月そら



渋すぎる声と、強面に劣等感を抱いてきた塵内芥。妹に騙されて声優オーディンションに参加した結果、声優デビューすることになってしまう。ヒロインは、芥がはまったアニメに出演していた人気女子高生声優の橋本ゆすら。しかも、彼女はなぜか、芥の学校へと転校してきて……
著者は、宮澤真一という名で声優活動もしている、いわば本職の方。それだけに、収録にまつわること、その周辺でのアレコレと言った辺りについては、かなりリアルに描いているのだろう、というのがわかる。
例えば、マイクを通しての収録について。素人である自分なんかだと、マイクを持って……なんていうのは、せいぜい、カラオケに行って、くらいのもの。でも、そういう感じでマイクを使えば、リップノイズとかそういうのが生じるし、適正な距離とかそういう感覚もわからない。また、自分の声について、自分で感じる声と、録音して聞いたときには全く違う、ということがある。その際に、何が求められているのか、何をすべきなのか? というようなこととか、その自分の声に対する意識だとか、そういうのは普通に生活しているときにはあまり考えないものだと思う。でも、声優の場合、そこを客観的に考えねばならない。その際のアレコレ。こういうところは、本職の人だからこそ躊躇なく書けることだと思うし、「なるほど」と感じる部分も多くあった。そういう部分で興味をひかれたのは確か。
ただ……
正直なところ、小説としての完成度は高くない。
つまり、先に書いたような部分は面白いのだけど、これって、「物語としての面白さ」ではなくて「情報としての面白さ」だと思うわけである。「物語として」と言う場合、情報そのものの面白さも大事なのだけど、誰がどう行動して、その結果、どうなって、そこに対して今度は……。そういうものの積み重ねだろう。ところが、本作の場合、その辺りが凄く弱い。いきなり大役に抜擢された芥が、業界のアレコレとかに戸惑って……というのはあるのだけど、戸惑うだけで、そこからの一歩があまりない。
さらに、構成についても疑問で、登場人物が多すぎない? というのを思う。ヒロインであるゆすらは、芥に先輩としてダメ出しをする役割、っていう点では必要なのだけど、大御所声優である両親との関係とかが出ている割に、あまり意味を為していない。幼なじみの美郷は、妹と二人で暮らしている芥の身の回りの世話をする理解者という立場だけど、それだけ。同じ現場に立つ、やはり高校生声優のゆうについては……え~っと……出す必要ありました? という状況。シリーズ展開を見据えての伏線、っていうことなのだろうけど、名前などを出す程度で良かったんじゃないかな? 何のために登場したのかも、イマイチよくわからない状況になってしまっていた。
ちょっと、話の中心線をしっかりとしてほしかったかな? というのは、正直、思うところ。

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