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五色の殺人者

著者:千田理緒



介護施設・あずき荘で利用者の遺体が発見された。逃走したと思われる犯人について、幸いにも利用者が目撃をしていた。しかし、なぜかその証言は、赤、緑、白、黒、青とバラバラの色の服を着ていたという。あり得ない証言、さらに消えた凶器。推理小説好きの新米介護士のメイこと、明治瑞希はその事件を調べ始めるのだが……
第30回鮎川哲也賞受賞作。
鮎川賞は、本格モノというような傾向が強いのだけど、本作の場合、かなり的を絞ってきた、という印象。
冒頭の粗筋でも書いたように、この作品の謎は目撃証言がバラバラである、ということ。で、例えば、目撃者がいた場所が別の場所であれば、他の人を容疑者と誤認した、とか、という可能性もある。しかし、目撃者となった老人たちは同じ部屋で同じタイミングで見ていた。だとすると、それはどういうことなのか? 目撃者は高齢者であり、認知症の症状が出ている者もいる。だから? しかし……
では、他の部分から絞り込むのはどうか? 例えば、被害者が何者かに恨まれていたのではないか? という動機の面から。捜査に当たった刑事から仕入れた情報などから、そういった情報も出てはいる。アリバイなどの情報から、ある程度は絞られる。しかし、結局、目撃証言の謎へと戻ってくる、というのは、その部分を中心に描くのだ、ということなのだろう。そんな中、メイは、利用者の孫である藤原と親密になっていく。
介護士の業務という日常を描きながら、一つ、また一つとヒントとなるような情報を集め、繋げていくことにより、だんだんと近づいく真相。しして、その中で少しずつ近づいてくる犯人の魔の手……。本当に、なぜ、同じ時間、同じ場所にいた目撃者の証言が、バラバラになったのか? という、その一つの謎を物語の核としてこれだけ読ませる作品を描く。これは、素直に見事だとも思う。
目撃証言がばらばらとなった理由。そして、終盤のひっくり返し。トリック(?)そのものは、かなり小粒だし、ひっくり返しには多少、強引さというのを感じるところがないではない。でも、先に書いたように、シンプルな、謎の魅力をしっかりと持った作品だと思う。

No.5693

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