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放課後の嘘つきたち

著者:酒井田寛太郎



怪我で練習できないボクシング部のエース・蔵元修は、幼馴染で同級生の白瀬麻琴に誘われ、部活でのトラブルを解決する部活連絡会を手伝うことになる。カンニング疑惑のある演劇部を探る修は、皮肉屋の部長・御堂慎司が黒幕だと推理するのだが……(『不正と憂鬱』)
から始まる連作短編形式の物語。
著者の作品は『ジャナ研の憂鬱な事件簿』以来なのだけど、カラーとしては共通しているかな?
冒頭に書いた1編目は、日本史教師から演劇部だけがなぜか好成績を上げている。それは、カンニングをしているからではないか? というもの。そして、その部長・御堂が怪しいと修は睨むが、御堂が伝えたのはそのテストのある「仕掛け」。さらに悪い噂。勿論、決して褒められたこと、とはいえない。しかし、だとすれば自らの行動を自白するような依頼を修たちにするとも思えない。そんな中、その教師が突如、辞職してしまい……
中学時代、厳しさと滅茶苦茶さを取り違えたような部活をしていた修。だからこそ、進学した現在、その教師のような合理的な考えをする人間は救いでもあった。しかし、その教師自身は……。人間は色々な面を持っている。悪事は悪事でも、すべてが否定されるわけではない。その何とも言えない後味が印象に残る。
そして、その後、御堂もまた部活連絡会を手伝うようになる。水と油のように相性が良くないが、しかし、協力しながら問題を解決する修と御堂。そんな御堂は、修のことを「素直すぎる」と評する。それは、上に書いた1編目での、日本史教師に対する言葉などにも現れている。そんな御堂の過去が描かれるのが3編目『ワンラウンド・カフェ』。
自主製作映画として応募されたドキュメンタリー。喫茶店でのインタビューを重ねるものだが、なぜか背景に加工したあとが……。この謎自体も魅力帝なのだけど、御堂がかつて、よく顔を出していた、という喫茶店なのに何か違和感が……。その理由は……。御堂がなぜ、皮肉屋で、捻くれたものの見方をするようになったのか、というのが判明する。そして、4編目『穏やかで温かい場所』では、ヒロインである麻琴の母が急死してしまい……
人間の本音と建て前……というか、表向きの顔と裏の顔というか……。誰だって、会社や職場での顔と、自宅での顔は違う部分があるはずだし、他人に言えないことだってある。そんなギャップが露になるときにどう行動するのか? 本当の強さとはいったい何なのか?
前作シリーズもそうなのだけど、かなりビターな面が描かれた話なのは間違いない。でも、1冊を通したうえで、少し前向きになれる結末も用意されており、充実した読後感も得ることが出来た。

No.5704

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