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死刑狂騒曲

著者:嶋中潤



「……お願いです……お願いですから助けてください」 「血の蠍」を名乗るテロ組織から発せられた犯行声明。彼らは、人質の命と引き換えに、死刑囚の解放を要求する。司法試験に合格しながらも、一刑事として活動する雲上菜奈は、その組織について捜査を開始する。だが、そんな組織の要求を政府は無視。その結果、人質の女性は殺害されてしまい……
「どんでん返しミステリー」と文庫裏表紙の粗筋には書かれているけど、ちょっと煽り過ぎかな? と……。ただ、物語のテンポの良さ、スピード感は素直に評価できる。
冒頭に書いたような形で始まる物語。人質の命と引き換えに、死刑囚の解放を迫るテロリスト。しかし、公安などのデータにも「血の蠍」なる組織は存在しておらず、何者なのかは不明。テロ組織と言うことで、解放を求めた相手はテロ関連の存在なのか、とも思われるが、指定した三人の死刑囚のうち、一人は学生運動に関わっているものの、あとの二人は幼児殺害と、婦女暴行及び殺害、という罪状。思想的な犯行とは思えない。では、「血の蠍」はただの愉快犯なのか? しかし、政府が無視をしたところで、人質の女性は殺害されてしまう。そして、その女性の残した言葉から、犯人グループは総理の孫娘も攫っていた、ということが判明。総理は、原則を曲げることを承知で、指定された死刑囚の一人を解放する。だが……
「血の蠍」を巡ってのさまざまな疑問点。解放された死刑囚の護衛役として抜擢されつつ、テロの人質と共に自らも人質の立場にされてしまう菜奈。そして、判明するテロリストの正体と、そのテロリストが要求したあること……
ハッキリ言って、かなりご都合主義だ、という感じはする。するのだけど、テンポの良い展開という最大の魅力あるため読んでいる最中は、そういう部分は気にならずに読むことが出来た。後で考えれば、というのはあるのだけど……ここは、緻密さ、よりも、テンポを優先したのかな?
そして、その中で突き付けられる死刑にすべきかどうか、という問い。それに対して、そして、テロ事件と言う最中に起きた問いかけに対しての人々の想い。そもそも、事件ついての知識がないときに問われたら? 無関係な人間が何を思うのか? そして、事件を捜査する刑事は……? ある意味では極端な話かもしれないけれども、これはこれでリアルなのだと思う。そして……
正直なところ、そこで本編が終わるので、「えっ!?」って思ったところはあった。ただ、エピローグで、もう一つの結末が、っていうのはうまいな、と。しかも、そこで人間の感情、本音と建て前、みたいなところが露になるから余計に。
それをすべて含めて、ご都合主義的なところはあるのだけど、それでも面白かった、というのが自分の感想。

No.5705

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