FC2ブログ

銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2

著者:中山七里



司法研修所の講師として招集された元判事の高遠寺静。就任にあたり、健康診断を受けるべく向かった病院で耳にしたのは、かつて散々振り回された名古屋経済界の重鎮である香月玄太郎。癌の疑いがあるためで、名医と名高いその病院の医師の治療を受けるために上京したというのだが、その医師に医療過誤疑惑が浮上していて……(『もの言えぬ証人』)
など、全5編を収録した連作短編集で、シリーズ第2作。そして、12か月連続刊行の1作。
全く物語の本筋に関係のない話をすると、表紙イラストの玄太郎さん……どんどんイケメンになっている感じがする。元々は、宝島社から刊行された『要介護探偵の事件簿』で主役として初登場したのだけど、その時はもっとゴツい見た目だったのが、どんどん元イケメン俳優みたいな見た目になってきているような……
まぁ、今回も静&玄太郎コンビで事件に、と言う中、静視点で物語が綴られる、という形式は同じ。ただ、玄太郎が癌の治療中、ということもあって前作ほどの暴走はしなかったかな? というのも思う。
その暴走っぷり、という意味では粗筋にもかいた1編目が印象的。玄太郎の主治医が関わった医療過誤……いや、殺人疑惑ということで、玄太郎がしゃしゃり出てくる。その医療過誤とは、薬剤の取り違え。しかし、そもそも医師と被害者にそれ以前の接点はなく、その一方で、被害者は会社を経営していたが借金だらけで火の車。それを殺すことに意味があるのか? と言えば……。正直、トリックそのものは、そんなに上手くいくか? と思わないではないけど、犯人、動機などを明らかにした上での、玄太郎の下した決断が、彼らしくて良かった。
このシリーズで、珍しく探偵役として静が動く2編目『像は忘れない』。建物の構造計算書の偽造という、懐かしい事件を題材にとった話だが、その偽造は、デベロッパーの指示によるもの、と告発した渦中の建築士が不審な転落死。デベロッパーに疑惑が集まるが……。トリックとか、そういうところは結構、シンプルな構造の事件ではある。でも、自らも、デベロッパーである玄太郎の知識などと、静の判断が結びついて、ということで、両者の良さを上手く出した話じゃないかと思う。高齢ドライバーの暴走事故を題材にした3編目『鉄の棺』。こちらも、両者の知識が、という点では共通。ただ、真相はわかったんだけど、これ……巻き込まれた側の怒りとか、そういうのはどうなるんだろう? という気がしないでもない結末なのが、ちょっとモヤっとする。
そんな中で、静の判事時代の同僚が次々と殺害され、静の周囲にも……となっていくのだけど……。まぁ、裁判官と言っても人間。判断の基準はあり、それに従って判断を下すのだけど、その判断に関係者が納得できるのか? と言えば……。その点は間違いなくあるはず。ただ、それ自体がかなり難しいテーマであるから、短編集の中でそれを描くのはちょっと難しかったかな……と言う感じはする。やるのなら、長編で読みたかったかな? という感じ(もっとも、著者は、あまりそういう取材とかをしないので、それはそれで微妙になりそうな気はするが……)
短編集のまとめ、としてはちょっと弱かった気がするけど、静、玄太郎、双方のキャラクターがしっかりとかみ合った内容になっており、(まだ全部は読めていないけど)ここまで読んできた2020年の著者の新刊たちの中では、一番楽しめた。

No.5713

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0