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監獄に生きる君たちへ

著者:松村涼哉



「私を殺した犯人を暴け」 廃屋に閉じ込められた6人の高校生たち。あるのは、わずかな食料と1通の手紙。差出人の真鶴茜は、7年前の花火の夜、ここで不審な死を遂げた恩人だった。なぜ今更、誰がこんなことを? 恐怖に駆られつつ、彼らはその夜の出来事について語り始める……
こう来るか!
密室に集められた複数人の人間。それは、1人の人物が死んだときに居た人間で、その真相を暴け、という指示が……。こういう設定の作品だと、一種のデスゲームというか、人狼ゲーム的な方向へ、ということが多いのだけど、そんな設定から社会派と言われるような作風へと移ろっていく、という流れにまず驚いた。
その渦中にある人物・真鶴茜。彼女は、集められた6人を担当していた社会福祉士。家庭に問題のあった彼らを保護する、というのが仕事。情熱をもってその仕事に邁進し、子供たちを救ってきた女性。物語の主人公、というか、視点となる桜介自身も、そんな彼女に救われ、恩人と慕っている。そして、そんな彼女が、桜介らを花火大会に誘い、そこで……。その日の参加者が語る当日の、そして、自身の過去……
桜介が、自分は茜に救われた、というように、茜の行動によって救われた人間は多い。しかし、じゃあ、全員が彼女に感謝をしていたのか、というと……。「救い」の手を差し伸べられた本人にとってはどうなのか? 確かに客観的に見れば、問題のある親。しかし、本人にとっては自分を愛してくれる存在。そんな親との絆を「保護」という名のもとに破壊されてしまった。そんな恨みを抱く存在も。主観と客観でのギャップ。その中での反発も当然に出てくる。
さらに、それぞれの回想が綴られる中で出てくる集められた人間の、もう一つの共通点……
作中でも語られているのだけど、激増していく児童虐待の通報件数。しかし、人員や予算が拡充されるわけではない。ただただ、一人一人の職員にその重責が積み重なっていくだけ。その中で、当然、手が回らなくなってしまった存在もいる。とりあえず前を見よう。そういうのは簡単。けれども、そんなに簡単に割り切れるのか、と言えば……。責任感が強ければ強いほど、そんな思いは強くなり、疲弊してしまう。茜もまた、そうなってしまっていた。しかし……
彼女の残した手帳。そこに記されたメッセージ。辛い状況を経験しながらも、しかし、再び前を見出るようになったこと。そして、何よりも彼女は、子供たちに本気だった。残酷な結末ではあるのだけど、でも、そのメッセージによって集められた面々が救いも見出すことが出来た。そんな結末にちょっとかもしれないけれども、光を見いだせたのが救いなのだろう。

No.5722

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