FC2ブログ

傍聴者

著者:折原一



フリーライターである池尻は、学生時代からの友人・等々力謙吾が自殺した、という一報を耳にする。つい数日前まで、読コンで出会った女性と婚約した、と楽し気に惚気ていた彼がなぜ? しかも、謙吾の財産は全ておろされていた。警察は事件性なし、としたが、殺されたのではないかと感じた池尻は、謙吾の母の依頼もあり、その女性を探るべく、謙吾がその女性と出会ったという読コンに参加することにして……
話としての繋がりはないけれども、著者の「〇〇者」シリーズの1作とされている作品。
冒頭に自分が書いた粗筋では、池尻が主人公の物語のように書いたのだけど、他の「〇〇者」シリーズと同様、様々な視点で物語が進展する。物語の前提として、冒頭の粗筋で書いた謙吾を殺害した、と思われる女性・牧村花音は逮捕され、現在、裁判中。そして、そんな事件のあらましを描くのが、池尻の手記として綴られる。さらに、そんな牧村花音の裁判を傍聴している、傍聴マニアの女性たちの会合、という3つのパートで綴られる。
ただ、そんな物語の中心は池尻の手記。冒頭に書いたような形で、読コンに参加。その中で栗栖汀子という女性と出会い、恋に落ちつつも謙吾と付き合った女性・牧村花音とも出会う。そして、その牧村花音について調べ始めるが……
その花音を巡っての物語は素直に面白い。その生い立ちから始まり、年の差婚を経ての死別と、遺産の相続。さらに、その後も、次々と男と関係を持ち、その末に相手は死去し、遺産を受け取っていた、という疑惑が湧き上がっていく。心象として、花音は真っ黒。しかし、決して容姿が優れているわけではないが魅力的な花音という人物に心惹かれるものがある。そして、汀子という恋人がいるにも関わらず、花音に魅了されて行ってしまう。そんな池尻の心境。一方で、裁判の場で、殺人は否定しながらも自らの男性遍歴などを赤裸々に語っていく花音に、その片鱗を感じつつも同時に違和感も。そんな中で、池尻の物語が終わりをつげ……
全334頁ほどの内容で、250頁くらいが花音という人物がどうなのか、というような話である第1章。そこにはひきつけられた。
そして、そんな花音の裁判が終盤を迎える中、傍聴マニアたちの面々が物語の中心になる第2章。そこで……
良くも悪くも著者だよなぁ……。著者と言えば……というトリックはあるのだけど、正直なところ、第1章段階で1つ、それが明らかになっているのでその辺りの衝撃はあまりない。その上で、丁寧に、それぞれの立ち位置などが説明され、ちょっとした登場人物などのアレコレが全て回収されるのは凄い。ただ、このトリックの売りであるスパッとした切れ味みたいなものは弱いかな、と。どちらかと言うと、上手くつじつま合わせをした、と言う感じ。
ただ、全ての真相が明らかになった時点で言うと、物語の中心人物である牧村花音と言う人物の哀愁とでもいうものは感じる。生い立ち、複雑な家庭環境。その中で翻弄されての、裁判での判決。ラストシーンの彼女の心情は、それを端的に表しているのかな、と言う風に思えてならない。

No.5734

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0