FC2ブログ

僕は天国に行けない

著者:ヰ坂暁



「死んだらどうなるのかな、人って」親友である殉の問いに鳴海は答えることが出来なかった。なぜなら、殉は余命数ヶ月なのだから。そんな翌朝、殉は子供を助けようとして溺死した。葬儀の場に現れた謎の少女・灯は、そんな殉の死はトリックを用いた自殺だという。鳴海は、灯と共に、その真相を調査することになって……
ミステリーではあるが、謎を解いて終わり、というのとは違った読後感を感じる。
物語は冒頭に書いたような形で始まる。鳴海自身、殉が自殺したとは思えない。そんなところに現れた灯の言葉もあり、その調査をすることに。しかし、だからこそ、自殺であるように思えてくる。だが、それは何故? 調べる中で判明したのは、最近、街で起きている連続殺人事件と殉が関連していることが分かってくる。しかし、本当に殉が連続殺人犯? このあたりの展開は完全にミステリーのそれ。しかし、連続殺人犯の正体、そして、そんな真相に成実を誘った灯の事情が明らかになることによって……
人間……というか、生物すべてに運命づけられた結末である「死」。死んだらどうなるのか? というのは、永遠の謎であり、だからこそ、宗教などにおいても最大の焦点となってきた。そんな「死」を前にしてのそれぞれの行動。
自らの死を前にしたからこそ、の殉の行動。恋人の死、という避けられない状況になったからこその、殉の恋人の行動。宗教家の家で育ち、しかし、教えと人の想いの違いを目の当たりにした灯の想い。そんな「死」を目の当たりにしてきた鳴海自身……
「死」とは何なのか? これって、上の文章でも書いたけど、人類、いや、生物にとって永遠の謎。そして、そんな中で、それをどういう風に捉えるのか、というのもまた、人それぞれ。その中で、「死」を目の当たりにした人々が取った選択肢。強い想いと、避けられない「死」の中での行動は、確かに極端かも知れない。けれども、その状況だからこその切実さ、というのが強く感じられる。
文庫裏表紙の「灯との関係は恋人じゃなかった」という言葉は、そんな中での鳴海と灯の関係を端的に表しているのだろう。

No.5736

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0