FC2ブログ

ゴールデンタイムの消費期限

著者:斜線堂有紀



小学生で作家デビューをし、天才作家として大ヒットを飛ばした綴喜文彰。だが、ある事件をきっかけに新作が書けなくなっていた。そんな焦燥に駆られるある日、紹介されたのは「レミントン・プロジェクト」に参加しないか、というもの。料理人、ヴァイオリニスト、画家、映画監督、棋士……。招かれたのは、世間から見捨てられた「元・天才」たち。プロジェクトは、AI・レミントンとのセッションにより、彼らを再生しよう、というものだった……
人間、AI、そして、才能……そんなものが主題として描かれる物語。
物語の設定としては、粗筋の通り。幼いころ、天才と言われた少年少女たち。しかし、現在は伸び悩み、苦悩の中にいる。そんな彼らをAIを使って再生しよう、というプロジェクトが始って、と言う話。その中で、彼らの葛藤とか、そういうものが綴られていく。
幼いころから、天才と呼ばれ、世間からの注目を浴びていた彼ら。だからこそ、結果が出ない、先へ進めないという葛藤は人一倍。そんな中でのプロジェクト。勿論、そのことに対する反発やら何やらもある。しかし、セッションによって、そこまで伸び悩んでいた部分の打開策も見えてくる。希望もある。でも、それでよいのか? という思いもある。そして、セッションを終えた暁には……という報酬……
作中でも言われているのだけど、そもそも、こういう分野において「何が正解なのか?」というものがある。主人公である文彰は、そもそも「何も書けない」状態に陥ってしまったのでちょっと例外的な部分はあるかも知れない。ただ、それ以外。例えば、棋士の場合、「勝敗」というはっきりとした結果がそこにある。そのために、戦略を練って、とかっていうのはわかる。しかし、芸術分野では? そもそも、人々が何に惹かれ、なんていうのは合理的な思考と言うわけでもない。それにどう対処するのか?
勿論、様々なデータなどから売れ線とかは見出すことが出来る。しかし、それは芸術的な価値とはまた別のもの。それで良いのか?
しかも、仮に、セッションによって再生できたとして、そこで彼らの活動が終わる、と言うわけではない。何かを成し遂げれば、では、その先は? そんな問いかけが常に続いていく。その中で、生きていく、ということが出来るのか? 覚悟があるのか? そんな中での、彼らの下した結論。
正解は、人それぞれ。何を求めているのか? どういう人生を歩むことを決意するのか? プライドを優先する者。続けられるなら、という者。ある種、折衷案を取る者。そして、別の人生を歩む者……。何が正しくて、何が間違っている、というわけではない。しかし、それぞれの悩み。そして、その中での結論は、それぞれにとっての正解なのだろう。そこに至るまでの葛藤、そして、結論。
主人公たちは一時代を築いた存在だけど、その根底にあるのは、普遍的なものではないか、という風に思える。

No.5755

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0