FC2ブログ

ストーリーテラーのいる洋菓子店 月と私と甘い寓話

著者:野村美月



恋も仕事もパッとしない岡野七子。そんな彼女がたどり着いたのは「月と私」という変わった名前の洋菓子店。そこには、美味しいお菓子と、その菓子に関する魅力的なエッセンスを引き出して語るストーリーテラーがいて……
という連作短編形式の物語。全7編収録。
連作短編というと、各編がバラバラという感じの話なのだけど、この作品の場合、店にふらっと訪れた一見の客もいれば、店に近しい側の話とかがあり、舞台は同じなのだけど、それぞれ、バラエティに富んだ作品集になっているな、と言うのを感じる。
粗筋で書いた第1話、岡野七子は完全に一見の客。就職に失敗し求職活動の中の腰掛け、と考えていたパートをズルズルと引きずり、恋人との連絡もほとんどしていない。最早、本当に恋人か? とすら思える状況。誰も自分なんて……そんなときに「月と私」に辿り着いて……。ストーリーテラー・語部の言葉。その言葉通りに優しい美味しさを持つ菓子に癒されて……。何がある、というわけではないけど、温かい雰囲気に包まれている。
個人的に好きなのは第4話。身体がごつく、見た目も怖い会社員の凌吾。スイーツが大好きなのだけど、その見た目から、周囲から浮いてしまうのでは、とコンビニスイーツくらいで我慢する日々。そんなある日、「月と私」でアシュットデセールがある、と言うのを知り、思い切って参加することに。思ったよりも男性も多かったが、イマイチ、常連たちの輪に加わることが出来ない。そんなとき、ヨシヒサ君という大学生と意気投合して……
自分の容姿などに対する劣等感。別にオッサンだろうが、何だろうが、スイーツが好きなら行けばいい。それはそうなのだけど、実際には……。だからこそ、ヨシヒサ君みたいなら……そう思う凌吾だったが、ヨシヒサくんは、ヨシヒサくんで……。好きなものと、自分自身に対する劣等感。その狭間で迷う二人と、でも、語部の言葉から親友になっていく様が良かった。
その一方で、洋菓子店の店主についての話とかは、結構、毒もある。元々、全くパッとしなかった「月と私」。そうなったのには理由があって……という第3話は、まさに人の意地汚さとかがあふれているし、また、その存在が見つけてきた語部の過去についての話。犯罪行為に加担? という疑惑と、そことの決着。語部が決して、悪人と言うわけではない、むしろ信念を持っている人間である、というのがわかるのだけど、この背景などにもやっぱり、人間の汚さとか、そういうのを感じる。
そして、そのころには、店主と語部の関係はどうなっているのか? というのがあるわけだけど、これについては一言で済ませてもらう。
お前ら、面倒くさい!
完全に、甘い感情ばかりなのに、それに対する言葉とかが、もう、ね……。店主の妹同様、面倒くさい、じれったい、そんな思いばかりが募った。

No.5757

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0