FC2ブログ

赤い砂

著者:伊岡瞬



「赤い砂を償え」 大手製薬会社に届いた一通の脅迫状。それは、3年前、この会社が起こした不祥事を告発するものであった。幹部は、懇意にしている調査会社にその調査を依頼するが、その所長が不可解な自殺を遂げてしまう。一方、その調査会社社長の自殺を知った刑事・永瀬は、3年前、親友の工藤が不可解な自殺を遂げたときと同じ状況であることに気付く……
2020年に刊行された書下ろし本……なのだけど、元々は、著者が新人賞に応募した作品を、当時の状況のままに改稿したものとのこと。
物語は3章構成で記されており、自分が書いた粗筋は、実は2003年を舞台に第2章の冒頭部分だったりする。では、第1章は、というと、脅迫状でも触れられている3年前、2000年に起きた出来事。
JR高田馬場駅で、感染症の研究施設の職員が飛び込み自殺。仕事にも、家庭にも問題がなく、動機らしきものは見えなかった。そして、それから2週間後、その自殺の見聞をした工藤が、警察署内で同僚の拳銃を奪い暴れた上で自殺。さらに、そこで撃たれた者もその後……。明らかに不可解な死。納得も出来ない部分がある。しかし、不祥事を隠したい警察の思惑。さらに、事件が起きると退職金などを含め、工藤の妻子が路頭に迷うことになる、ということで捜査続行を断念していた。しかし、それから3年、同じような事件が起きたことで、独自に捜査をすることにして……
3年前の不祥事を掘り返すな、という警察内部からの圧力。さらに、独自捜査の中で製薬会社の社長周辺に迫ることとなり、そこからのプレッシャーも。3年前の自殺者遺族に、不可解な金が流れているなどの事実は判明していくものの、永瀬は警察内でだんだんと孤立していく。そして、捜査協力者の女性が行方不明になってしまう。
読者とすれば、製薬会社が関わっていることは明らかにされており、そこが隠蔽のために動いているのもまた明らか。しかし、永瀬の想いとは裏腹に、周囲の状況が狭められていく様は、とにかくもどかしい。しかも、そのウィルスを何者かが広め、それを利用して何かを企んでいる、ということが見え隠れしているから余計に。
あとがきを読むと、丁度、新型コロナウィルスの蔓延とか、そういうご時世だからこそ刊行された、ということなのだけど、いわゆるパンデミックもの、というよりも、組織などの中でのしがらみと、そこに対抗する永瀬という構図の部分が強調された作品になっている。それを考えると、あんまりご時世は関係ないんじゃない気がする。
その上で、真犯人の思惑。ある意味で、正義を語っているのだけど、その裏には歪んだ想いが……。むしろ、この辺りは、ネットでの暴走とか、そういう部分を彷彿とさせるところがあって、そちらの部分に、時代性のようなものを感じたりする。

No.5759

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



COMMENT 0