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お電話かわりました名探偵です

著者:佐藤青南



Z県警本部の通信指令室。110番通報を受けるそこに勤める早乙女は、その美声もあってファンが出来てしまうほど。そんな早乙女の元に、奇妙な通報が入った時、先輩である君野いぶきが割り込んできて、その謎を解明してみせて……
という連作短編集。全5編を収録。
物語は早乙女が奇妙な通報を受ける。これは悪戯では? なんて怪しみながら、その通報者の話を聞くのだけど、そんなときに先輩であるいぶきが電話に割り込んできて、早乙女にとっては奇妙な質問だったり、指示をし、その事件を解決する……という流れ。著者の、一部屋を舞台にした作品というと楯岡絵麻シリーズが思い浮かぶのだけど、本作の場合も安楽椅子探偵、一部屋でのシチュエーションを題材にした作品と言う意味では共通していると言える。まぁ、いぶき先輩は、楯岡絵麻のように口は悪くないけれども。
収録されたエピソードでまず、凄いなと思ったのは1編目『家を盗まれた女』。通報してきた女性が言うのは、老婆が「自分の家が盗まれた、と主張している」というもの。比喩ではなくて、窃盗という意味で。勿論、家なんて持ち去ることはできないのだから、明らかにおかしい。しかし、そんな背景は……
奇妙な通報。その中で示されたヒント。そして、いぶき先輩の奇妙な指示。物語のベーシックとなる展開を示すとともに、謎解きの段階になって、前提が次々とひっくり返っていく流れ。短い分量で多くの情報を裁き切っての、この流れは見事の一言。
2編目『誰かが大根を食べた』。女性からの通報は、何者かが家に潜入した形跡がある、というもの。そして、何かを取られたのかと尋ねると、大根が1センチほどと、炭酸水……。これも、事件としてはかなり珍妙な事件ではある。ただ、その通報者が実はある事件に関わりがある、ということが判明することで、そのアレコレの意味がはっきりするのはたしか。ただ……犯人……そんな手間をかける意味があるのか、それに? とは思った。
ちょっと変わり種なのは4編目『幻の落書き魔』。県議からかかってきた通報。それは、自宅の壁に、何者かが落書きをした、というもの。いぶき先輩に推理させろ、という県議の要求に対し、自分が推理する、と言う早乙女だったが……。事件そのものは、そのトリックってどこまで? という思いはある。ただ、それよりも、いぶき先輩が直接、電話に出るわけではなく、早乙女の悪戦苦闘を見ながら呟き(というにはデカすぎる声で)でヒントを出しまくる、という流れで、変化球を楽しめた。ただ、言葉だけ見ていると、いぶき先輩、サボってるようにしか思えないのですが。
で、物語の中で、いぶき先輩は、主人公である早乙女のことを意識していて……? なんていう描写も見え隠れ。ところが、5編目のラストで、それがハッキリするのかな? と思いきや……。事件とは関係がないけど、これ、物凄くモヤモヤするのですが!

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