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スキマワラシ

著者:恩田陸



兄と共に古道具店を営む散多。彼には、想いなどが込められたものに触れると、その道具が見た過去の風景を見ることが出来る、という不思議な力があった。廃ビルに現れるという、不思議な少女の噂話。散多を強烈に惹きつけるタイル……。それらが意味するものは……
最近、自分が感想を書いているときに、よく使いがちなフレーズ。
「著者の作品を読むのは〇年ぶり!」 ……今回は3年半ぶりでした。
と、久々の著者の作品なのだけど、良くも悪くも、著者の作品を読んでいるな、という感じがする。
とにかく、物語の切り口、というか、そういうところが独特。全14章構成で、460頁あまりの分量。各章「~のこと、~のこと」というタイトルがつけられ、言い方は悪いが、主人公・散多の遠回しな、回りくどい一人語り、というような形で物語が綴られていく。まず、その回りくどさ、みたいなところが著者の作品らしい。
そして、その中で語られる物事。兄弟のこと、物心がつく前に死んだ両親の事。スキマワラシと名付けた存在について。はたまた、散多をしても、強烈に訴えかけてくる想いのこもったタイルについてのこと……。序盤は、各章で散発的に描かれたそれらの話が、物語が進むにつれてだんだんと線を描いていく。最初は、回りくどくて、何がどうなるねん、という印象だった話が、だんだんと結びついていく過程は魅力的だ。
読んでいて、思ったのは、『EPITAPF東京』『タマゴマジック』辺りのテーマ性に、散多の物語を組み合わせた感じ、というものかな? 人間だけでなく、街などにも意思、記憶のようなものがあるのだ、というような物語が、今あげた作品の、一つのテーマなのだけど、その点で廃ビルなどに現れるスキマワラシと呼ぶ存在。各地で散多が手に取ることになるタイルの存在、というようなものがあり、そして、そのタイルは、戦前に建てられたあるビルのために作られたもの。街か、建物か、は違えども、そういうところに記憶があり……という部分で共通したものを覚えるし、そこへ両親、散多自身の物語というのが重ねられていく。何かふわふわしている部分があり、しかし、何か人とは違うものから感じられる意識とか、そういうものがある、という雰囲気が近いように思うのだ。
そして、そういうものが積み重ねられ、だんだんと「こうではないか?」という推測などが成り立っていく。そして……
何かわかったような、でも、何もわかっていないような、そんな結末へ……
この辺りも著者の作品のイメージ通りなんだよな……。単純に物語として、「で?」と思ってしまうような。でも、その一方で、表紙にあるような夏の雰囲気の中で感じた一瞬の風のさわやかさのような……
わかったような、わからないような。でも、ちょっと不思議で、決して不快ではない後味が残った。

No.5791

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