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クスノキの番人

著者:東野圭吾



窃盗を働き、警察に逮捕された玲斗。送検を待つ身となった彼は、突如現れた弁護士から、依頼人の命令を聞くならば釈放する、と提案される。依頼人に心当たりがものの、従うことにした玲斗。彼の前に現れた依頼人、千舟は実は、玲斗の伯母であるという。そして、千舟は、玲斗に対し、「クスノキの番人」をするよう命じて……
著者の作品で、たまにあるちょっとファンタジックな作品、とでも言うべきか……。以前、『ナミヤ雑貨店の奇跡』を読んだとき、「著者はこんな作品も書くんだ」的な感想を綴った記憶があるのだけど、雰囲気としてはそれに近いかな。
冒頭に書いたような流れで、クスノキの番人、となった玲斗。そのクスノキは、パワースポットなどと言われ、観光客なども来る場所だが、夜になると予約をして、そこへ籠る人が現れる。訪れた人々は、そこで「祈念」をし、それが終わると蠟燭代として金銭を払って出ていく。ある意味で、宗教施設のような雰囲気を漂わせている場所。しかし、玲斗は、番人と言っても、その受付や周辺の掃除をするだけで、その「祈念」が何なのかはよく知らないし、また、番人をするよう命じた千舟もまた、「いづれわかる」と言うだけで、その説明はしてくれない。千舟が行うのは、彼女が顧問を務めている柳澤グループの会合などに、玲斗を連れ出し、挨拶をさせることのみ……
そんなある日、祈念の常連である佐治という男性の、娘が訪れる。娘・優美が言うには、父は最近、仕事中に出かけては母ではない女性と密会をしている。そして、その狭間にこのクスノキを訪れている、ということ。父は浮気をしているのか? そして、何をしているのか? 勿論、玲斗自身も祈念が何なのかは知らない。そこで、祈念の意味を知る、という目的もあり、彼女に協力をすることにして……
祈念とは何なのか? という部分を中心として、玲斗を連れまわす千舟の目的。佐治一家の出来事。他にも訪れる客(?)とのやりとり。少しずつ祈念が何なのか、という謎が解きほぐされていくからこそ、その中で玲斗が成長していく様を見ることが出来る。その意味で、この作品は長編であるからこそ、という意味はわかる。わかるのだけど、その一方で千舟に連れまわされた、と思ったら、今度は優美に協力し、今度は……とそれぞれの部分がコマ切れ状態で続いていくのでちょっとテンポが悪いような感じもしなくはなかった。これが、純粋なミステリー作品のように、大きな事件があって、その周辺に色々なことがあって、というのならば、最終的に1つに収束するんだろう、と思えるから気にならないのだけど、本作の場合はそこが見えないし、優美への協力に関しては、千舟の言いつけを破ったり、職場放棄しているからなぁ……。読み終わって、長編だからこそ、というのは納得なのだけど、そこがちょっともどかしいところ。
最終的に、物語としてしっかりとまとまっている。
でも、本作でもって知った祈念の意味とか、そういうのを前提にした連作短編みたいなものが出たら、面白そう、とも感じた。

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Tag:東野圭吾 小説 感想 クスノキの番人

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