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境界線

著者:中山七里



2018年5月。宮城県警捜査一課の刑事・笘篠の元に一つの連絡が入る。それは、東日本大震災で死亡したと思しき妻の免許証を持った女の遺体が発見された、というもの。それも、つい昨日まで生きていた、という遺体が……。急ぎ駆け付けた笘篠だったが、その女は妻とは似ても似つかない別人だった。女はいったい何者なのか? 笘篠は女について調べ始めるが……
2020年、12か月連続刊行作品の1つ。自分はこれで全て読了。
……うーん……薄味……
物語は冒頭に書いたところからスタート。震災で行方不明(死んでいるであろうが、遺体が見つかっていない)の妻。その妻の戸籍を奪い、妻の名前で生活をしていた女。その女は何者なのか? 少しずつ暴かれるその人生。そして、その本人……。だが、今度は、顎を破壊され、指を切り取られた男の他殺体が発見される。その男も、震災で行方不明になった男の戸籍を自分のものとして生活していた……
他人の戸籍を奪い、その他人として生活している存在がいる。立て続けに発覚したこの事件はどういうことなのか? どうやって、戸籍を奪ったのか? というのが、物語の焦点ではある。あるんだけど……そういう情報がどこにあるのか? と考えたときに真っ先に思いつく場所で、っていうのは随分と雑だし、そこから戸籍を売買していた存在までは一直線。実際の捜査では、そんなものなのかも知れないけれども、小説、ということを考えるとどうしても物足りなさを覚える。さらに、黒幕が見えてきたところで、その黒幕の、高校時代の同級生・五代の視点で、その黒幕の人生が語られる。五代自体が『護られなかった者たちへ』で出てきたキャラクターで、本作ではちょっと出てきただけなので、いきなり視点が変わることに戸惑いを覚える。
さらに、個人的に印象を悪くしてしまうのは、著者が法律を理解していないなじゃないか、と思えること。本作の舞台が、2018年というのは、東日本大震災から7年。生死不明の人を「死亡した」と認定する失踪宣告ができるようになったから、ということなんだけど……。この7年と言うのは、ある日突然、家出をしてその後、行方が分からなくなった……みたいなケースの話。津波みたいな災害の時は、1年後に死亡を認定する特別失踪が適用されるはず。しかも、ちょっと調べると、東日本大震災の時は、失踪宣告なしで死亡届を受理する、という制度が行われていた、ということも判明。
いや、そういう制度などがあっても、実際に遺体を見たわけでもない相手を「死んだ」と思えない。思いたくない、と言う心情は理解できる。また、黒幕の絶望感っていうのも理解できないではない(もっとも、なんでそっちに振り切ってしまうのか? という気もするが) その辺りの迷いとか、そういう部分は色々と考えさせられた。……それだけに、ストーリーラインの微妙さとかが、どうしても……と思えてしまった。

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Tag:小説感想 中山七里 境界線

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