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不可逆少年

著者:五十嵐律人



どんな少年も見捨てない。そんな信念のもとに活動する開催調査官・瀬良真昼。そんな矢先に起きたのは、少女が同級生の父親3人を殺し、実の姉に重傷を与える、と言う事件。そして、その被害者遺族たちも次々と事件を起こし……
リーガル・ミステリーという風に書かれているけど、主人公が家裁調査官である、という部分はさておいて、法律に関する部分で読む、と言う感じの話ではないな、という印象。
物語そのものもちょっと特殊な格好。第1章で、主人公の瀬良が事件を起こした少年が隠していた謎を解き、更生への一歩を歩ませる、というエピソードが描かれたのちは、しばらく瀬良は傍観者的な立ち位置。粗筋で書いた少女による事件が発生。そして、その事件の被害者遺族である同級生の少年少女たちの姿が描かれる。
とにかく印象的なのは、少年少女たちの置かれた立場。元ピアニストであり、薬物依存症の父を持つ砂、漠の兄弟。弁護士と言う肩書の義父に虐待されていた茉莉。人を傷つけることを平気で行ってしまう事件の犯人である詩緒と、その妹に殺されかけた姉の奏乃。それぞれが、劣悪な環境に生きており、そして、ある意味で、茉莉などは父を殺してくれた奏乃に対して感謝の念すら抱いている。さらに、そんな彼女たちの周辺では、女子高生の髪の毛を切り取る「カミキリムシ」事件まで起こる。そんな中で……
劣悪な環境の中で、しかし、希望を持とうとしてもがく少年たち。だが、茉莉が覚醒剤所持で逮捕され、さらにカミキリムシ事件の犯人として、漠が出頭し……。被害者遺族である彼らに一体、何が起きているのか? そんな思いを抱く瀬良は少しずつ事件を解きほぐそうと奮闘していく。だが、そんな中で引っ掛かるのは上司である早霧が言う「脳の機能的気質などで、事件を起こしてしまう存在がいる」という話。彼らは立ち直ることは出来るのか……
と言う、生来的に犯罪に、という話よりも、やっぱり茉莉、砂、漠兄弟の話が印象的かな? 美容師になりたい、という夢を父によって絶たれた砂。そんな砂の元に通い、髪を切ってもらう茉莉。しかし、砂の心は既に壊れていて……。何とか穏便に、と言う形で動いた形。しかし、それが裏目に出てしまい……。何とか助け合おうとした三人。しかし、境遇と同じく助けを求める相手はおらず、起きたのは最悪の結末。その中で考えたのはまた……。一度狂った歯車がどんどんおかしな状況へと進み、取り返しのつかない方向まで追い込まれていく、という展開に、何よりも心が痛む。彼らは彼らでまっすぐな存在なだけに余計に。
その上でのひっくり返し。そこで、タイトルにも部分も関わってきて、ひっくり返しになるわけだけど、ここはちょっと強引な感じかな? という感じがした。

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Tag:小説感想 五十嵐律人 不可逆少年

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