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暗黒自治区

著者:亀野仁



隣国に吸収され分割して統治されるようになった日本列島。神奈川公安局の刑事・雑賀は、中央政府高官の拉致計画に失敗して逮捕された佐野由佳の護送の任を受ける。だが、その道中の高速道で何者かの襲撃を受ける。果たして、犯人の目的は? 雑賀は、由佳を連れて決死の逃亡激を開始する……
第19回『このミス』大賞・文庫グランプリ受賞作。
『このミステリーがすごい』大賞の受賞作ではあるのだけど、謎要素というか、謎解き要素というのは薄く、由佳を狙う襲撃者、そして、実質的に警察を裏切った雑賀を追う警察当局。そんな状況での逃亡激を描いたアクション作品という感じかな? 実際、そんな描写が延々と続いていく。
むしろ、物語の中心となるのは中国の支配下に置かれた日本の状況と言う感じかな?
日本人は「和族」と呼ばれ、本土の人々から見れば下の存在として扱われている。しかし、その一方で、それまでの社会様式とかそういうものも残っており、その状況に苛立つ者も。当然、日本の治安は悪化し、銃器なども流通するようになった。
それを代表するのは、雑賀の同僚である劉。本国の人間である、ということで支配するような立場ではある。あるのだが、雑賀に対しては経緯も持っており、そんな雑賀を追う役割を追う。ただ、和族に対して社会様式などに対しての不満も抱えている。例えば、形式的、かも知れないけどルール順守を頑なに守ろうとする和族に劉が苛立つ、とか。これは、完全に文化の違いだよなぁ、と。確かに、形式的で意味がないじゃないか、なんてことを思うことはある。あるのだけど、逆にそういうのを疎かにすると、だんだんと簡略化され、大切なことまで削られていく、なんていうことも起こりえるわけだし。そういう部分を、向こうの感覚で描いていくところとかは、結構、面白かった。
そして、逃亡激を続ける雑賀と由佳。警察を事実上、裏切る形になってまでなぜ由佳を守り、自由にするというのか? そんな彼の過去……。変なこだわりを持つ雑賀と、由佳のヘンテコなやり取りなどから、だんだんと明らかになっていく。
……のだけど、終わってみると、雑賀の動機とか、襲撃者の正体とか、そういうのは明らかになるのだけど消化不良感が残った。最後の最後がかなりアッサリと終わってしまった感じがするし、ある意味でスタートラインに戻っちゃったわけだしなぁ。また、中国に支配された、というのがどこまで物語に寄与しているのか? という点でもちょっと物足りなく感じるところがある。その辺りが、ちょっと不満かな?

No.5800

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Tag:小説感想 亀野仁 暗黒自治区 『このミス』大賞

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