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毒をもって毒を制す 薬剤師・毒島花織の名推理

著者:塔山郁



新型コロナウィルスの脅威が迫りつつある日々。水尾の勤めるホテルも、客足が減りつつあった。そんな中、水尾は、アルコール依存症の父がある日、知り合いの「魔法」によって、「酒がまずい」と口にして断酒した、という話を耳にする……(『ノッポちゃんとアルコール依存症』)
からの連作短編集。全3編を収録。
丁度の時事ネタ、というか、現在もまだ一進一退を繰り返している新型コロナウィルスが広がりつつある、という昨年(2020年)初頭を舞台にしている。ただ、3編のうち、前半2編は、背景としては新型コロナウィルス蔓延下を舞台としているものの、謎自体はいつも通り、という印象。
粗筋でも書いた1編目。謎は冒頭の通り。アルコール依存症の父を何とか治したい。しかし、本人はその意思がない。そんなとき、知人があることをしたのだという。これ、何を使ったのか? という部分については、ちょっと知識のある人であれば、「多分、これだろう」というのは想像できる思う。自分も、そこは予想通りだったし。そして、それは毒島さんが最も嫌いそうなやり方……そう思いきや……
確かに、依存症の治療とかについて調べると、医学的な方法はある。あるのだけど、同時に大切なものがある。その方法を幼い子供に実行させた。そして、それがバレることも……。そのやり方は、まさに「魔法」というにふさわしい物になっている。
2編目『毒親と呼ばないで』。コロナウィルス感染の可能性がある、として、ホテルでの隔離生活に入った水尾。そんな水尾が、毒島が職場で、一人の若い母親とのやり取りの話を聞く。毒島の元を訪れるその女性・神谷。幼い娘を出汁に、毒島との会話をしに来ているように見える神谷。もしかして、代理ミュウハウゼン症候群か、なんてことも思う薬局の面々だったが……
これは……それこそ、今回のコロナウィルス症候群に関しての有象無象の話とも関連している話だなぁ……と。薬局の面々から見ても「変わり者」と感じる女性・神谷。だからこそ、怪しいという風に思っていたのだけど、その背景には、神谷自身が自分に対しての劣等感がある。そして、医学、薬学などに関する怪しげな情報が色々と広まっている現実がある。神谷の判断を愚か、と言えばそれまでなのだけど、一歩間違えば自分だって、そういう情報に振り回される危険性がある。その難しさ、というのを感じる。
そして、3編目『見えない毒を制する』。間もなく、隔離生活も終わりか、と言うときに水尾は発熱してしまう。そして、同僚も次々と発熱……。やはり、新型コロナウィルス? しかも、クラスターが発生? だが、その発熱した同僚たちの状況、共通点を見出すと……。
昨年からの新型コロナウィルス。その脅威が言われる中、しかし一方で毎年、冬になると猛威を振るっていたインフルエンザの感染者は激減した、なんていうデータもある。それは勿論、新型コロナウィルス感染を恐れて、皆が色々なことを自粛したり、はたまた、手洗いなどを徹底したから、という面があるのは間違いない。けれども一方で、新型コロナウィルス感染を恐れ、病院に行かなくなったため、発見されなかっただけ、みたいなこともあるかも知れない。そして、もし、その発見されなかったことで……。適切な治療、適切な投薬。そういうもので、軽く済んでいたはずの病が長引いて……。話としてはハッピーエンドなのだけど、「もし?」というのを考えたとき、これってすごく怖い話だな、というのを思わずにはいられない。

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Tag:小説感想 塔山郁

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