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むすぶと本。 七冊の『神曲』が断罪する七人のダンテ

著者:野村美月



他人の大声や、暴力的な言動が怖くて、図書室登校を続けている中学生の清良。けれども、そんな彼女の居場所である図書室も最近、少し様子がおかしい。生徒の集まるネット掲示板に、おかしな書き込みがされているのだ。中でも「ダンテ」という人物の書き込みは過激で、皆がその噂話をするほど。そんなある日、自分も図書館登校だ、という、むすぶという少年と出会い、『新曲』という本を紹介されるのだが……
ファミ通文庫と、単行本で同時展開で刊行されているシリーズ。本作は単行本の方。ということで、夜長姫の出番はあまりなかったり。
物語は、ダンテの『神曲』になぞらえた七つの大罪をモチーフとした物語を繰り返していく形で綴られていく。ネット掲示板「リンボ」に書かれている学校内での数々の噂。勿論、それは黒い噂。その噂の対象となっている……と思しき人々の苦しみとか、そういうものを、『神曲』になぞらえてむすぶが解きほぐす、という形の連作短編集形式の物語。
例えば1編目『暴食』。掲示板にある「醜い豚」。それが自分の事である、と感じている水鞠。その書き込みが原因で、ものを食べては吐き出す、ということを繰り返していた。しかし、とにかく何かを食べたい。でも、それをすれば……。そんな日々。その中で、健康を害し、精神的に追い詰められていく水鞠。そんな彼女に対し、むすぶは……。食べることは罪なのか? そもそも、人間は食べねば生きていけない存在なのだから……。暴食の罪、というのは何を指しているのか? あくまでも、優しい雰囲気で語るむすぶの人柄が光る。
個人的に好きなのは『怠惰』かな? 部活内でのクーデタ計画。中心にいるのは、クラスの中の中心人物である華江。ハッキリ言って、計画としては穴だらけ。しかし、千遥はわかっていても何も言わない。それを言っても、華江が変わるとは思えないし、過去にそうやって孤立した過去もあるから。上級生を追放しよう、と息巻く華江を引いた眼で見ていた。華江は、自分を友達だという。でも、千遥は華江のことを友達だとは思っていない。そんな彼女に対し、むすぶは……。『怠惰』とは何をするのか? 何もしないことなのか? いや、それだけではなくて、友達になろう、とする努力を怠ることなのではないか? 本当にちょっとした言葉なのだけど、学校と言う環境の中の人間関係という息苦しい状況と、それを一言で解きほぐすむすぶの姿が印象的だった。
そして、そんな物語は、ネットへの過激な書き込みをしている「ダンテ」が何者なのか? へ……
正直なところ、私が中高生くらいの頃はネット掲示板という文化そのものがなかった時代なのだけど、確かに、それが出現して以降も、そういったテクノロジーと、その付き合いっていうのは常に変化を続けている。そんな時代の流れ。そして、作中で起こる様々な出来事を知っているのは誰か? そういうのを考えたときに……。ダンテの正体について、リアリティっていう部分はちょっと弱い気もする(これ以上は完全なネタバレなので言わない) でも、ちょっとした伏線などからのひっくり返し。あくまでも、むすぶの、本や人に対する優しさで解決すまとめ方に、ほっとした。

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Tag:小説感想 野村美月 むすぶと本。

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