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パンドラ 猟奇犯罪検死官 石上妙子

著者:内藤了



好景気に沸く日本。そんな空気とは裏腹に、法医学を学ぶ大学院生・石上妙子は、自殺とされた少女の口腔内から遺書らしき紙片が発見されたことに違和感を持つ。そんなとき、新聞、雑誌の記事で十代の少女が連続して失踪していることを知る。新米刑事の厚田、イギリスから招集された法医昆虫学者であるジョージの力を借り、事件の謎を解明しようと動く……
藤堂比奈子シリーズにおいて、「死神女史」と呼ばれる法医学者・石上妙子の過去を描いたスピンオフ作品。
タイトルに猟奇犯罪、というものがあるように、好景気の中で姿を消していた少女たち。しかし、その被害者たる少女たちの遺体が発見されたわけではなく、本当に連続殺人事件が起きているのかどうかもわからない。ただ、立て続けに発見された遺体には、確かにポエムのようなものが……。でも、その被害者に共通点はあるのか? そして、その犯人は?
法医学者である石上の知識。法医昆虫学者であるジョージの知識。そういうものから、事件に迫っていく様は、素直に面白い。犯人そのものについては、ある程度、最初からバレバレだ、と言う感じがしないでもないけれども……
ただ、本編をある程度、読んでいた身としては、それよりも、石上、ジョージ、厚田という3人の人間関係の方が気になって仕方がなかった。女性の幸せは結婚だ、などという価値観がまかり通っていた時代。研究の徒としての生活を志した石上。そんな彼女の前に現れたジョージ。熱烈にアプローチをしてくる彼に、思わず心惹かれてしまう。そんな感情を持ちながらも、同時に進んでいく事件。ジョージは研究者としても、また優秀であり、そちらにも惹かれてしまう。一度は、自分の人生に対して下したはずの決意が崩れていく。だが……
本編を読んでいると、ジョージのその後、というのは既に明らか。だからこそ、今回の物語の結末もまた、最初から予想できることではある。あるのだけど、でも、本編において、言い方は悪いけど「下手な男よりも男らしい」と感じさせるような石上の姿が、この事件、その結末において生成されたのだ、ということが何よりも感じられた。
その一方で、石上さんは一旦は……となるわけだけど、こちらは厚田刑事を主人公としたスピンオフの方で描かれる……のかな?

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Tag:小説感想内藤了

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