著者:大門剛明

女性検事・黒木二千花。笑顔を絶やさずに被疑者に向かい合い、すぐにその話に感化されてしまう頼りない存在。立ち合い事務官である立原は、そんな彼女に苛立っていた。だが、とある事件で彼女に対する認識を改めて……
と言う風に粗筋を書いてみたのだけど、実は、この話は第2章になってから、だったりする。
第1章がプロローグのような話。23年前、まだ新米の立ち合い事務官である立原が尊敬する検事・本宮と共に挑むことになった事件。缶詰工場を営む男性が殺され、被疑者として逮捕されたのはその工場で働く従業員の加瀬。社長である岡野を殺害し、その金を盗んだとして逮捕された。加瀬は、事実関係を概ね認めており、本宮・立原の心象も黒。しかし、弁護人が付いたところで、態度は一変。否認に転じ、さらに取り調べの最中の暴力を問題視される。そして、結局、本宮、立原は加瀬が黒であると確信しながらも起訴を見送ることに……
それから、23年、女性検事・黒木の下で働くことになった立原。彼女の態度に苛立ちながらも、しかし、妻が夫を殺そうとした、と言う事件の真相を見抜いた黒木に、立原は、その考えを一転させる。そして、次なる事件で被疑者となったのは、23年前の因縁の相手・加瀬。そして、その弁護人は、やはり23年前の弁護人である古沢と、加瀬の息子・涼真。
事件が起きた日、加瀬は飲食店で酒を飲み、記憶がないという。いつも顔を出している飲食店に行ったこと。そして、どこかで、たい焼きのようなものを食べたこと、のみ。一方、殺人現場の近くで、加瀬と思しき男を見た、という証言がある。そんな中での攻防。
黒木、立原の足で稼ぐ形の捜査。そして、法廷での攻防。事件の時間、確かに加瀬は居酒屋にいた。しかし、そこから抜け出すことは? そんな形で有利に事件を勧めた、と思った矢先に飛び出した思わぬ証言。それによって……。短い分量の中での3つの事件。過去からの因縁。そして、メインとなる事件におけるひっくり返しの連続。そのテンポの良さが何よりも面白かった。
……もっとも、法廷でのひっくり返しとかは、完全に違法行為そのものだし、また、メインとなる事件の真相部分は……ある程度、予測できるかな? という部分はある。後者については、完全に重箱の隅をつついているようなものだけど。
と、ちょっと引っ掛かるところがないではなかったのだけど、エンタメ作品、として考えるならばしっかりと完成され、楽しい作品だった。
No.5818

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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と言う風に粗筋を書いてみたのだけど、実は、この話は第2章になってから、だったりする。
第1章がプロローグのような話。23年前、まだ新米の立ち合い事務官である立原が尊敬する検事・本宮と共に挑むことになった事件。缶詰工場を営む男性が殺され、被疑者として逮捕されたのはその工場で働く従業員の加瀬。社長である岡野を殺害し、その金を盗んだとして逮捕された。加瀬は、事実関係を概ね認めており、本宮・立原の心象も黒。しかし、弁護人が付いたところで、態度は一変。否認に転じ、さらに取り調べの最中の暴力を問題視される。そして、結局、本宮、立原は加瀬が黒であると確信しながらも起訴を見送ることに……
それから、23年、女性検事・黒木の下で働くことになった立原。彼女の態度に苛立ちながらも、しかし、妻が夫を殺そうとした、と言う事件の真相を見抜いた黒木に、立原は、その考えを一転させる。そして、次なる事件で被疑者となったのは、23年前の因縁の相手・加瀬。そして、その弁護人は、やはり23年前の弁護人である古沢と、加瀬の息子・涼真。
事件が起きた日、加瀬は飲食店で酒を飲み、記憶がないという。いつも顔を出している飲食店に行ったこと。そして、どこかで、たい焼きのようなものを食べたこと、のみ。一方、殺人現場の近くで、加瀬と思しき男を見た、という証言がある。そんな中での攻防。
黒木、立原の足で稼ぐ形の捜査。そして、法廷での攻防。事件の時間、確かに加瀬は居酒屋にいた。しかし、そこから抜け出すことは? そんな形で有利に事件を勧めた、と思った矢先に飛び出した思わぬ証言。それによって……。短い分量の中での3つの事件。過去からの因縁。そして、メインとなる事件におけるひっくり返しの連続。そのテンポの良さが何よりも面白かった。
……もっとも、法廷でのひっくり返しとかは、完全に違法行為そのものだし、また、メインとなる事件の真相部分は……ある程度、予測できるかな? という部分はある。後者については、完全に重箱の隅をつついているようなものだけど。
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