fc2ブログ

元彼の遺言状

著者:新川帆立



「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」 奇妙な遺言を残して大手製薬会社の御曹司・森川英治が亡くなった。学生時代、少しの間だけ、英治と付き合っていた弁護士の剣持麗子は、犯人候補の代理人として森川家の主催する「犯人選考会」に臨むことに。数百億ともいわれる財産を手にすべく、依頼人を犯人に仕立て上げるべく奔走することになる。その一方で、元恋人である、と言う理由で軽井沢の屋敷を譲り受けることになるのだが……
第19回『このミス』大賞・大賞受賞作。
何か、色々なものを詰め込んできたなぁ、というのが読みながらまず思ったこと。
主人公の麗子は、とにかく金こそすべて、というような考え方の女性。恋人から婚約指輪を貰った、と思ったら金額に文句を言って納得をしない。さらに、法律事務所で後輩の指導が悪い、という理由でボーナスが少なかったら、それに文句を言って事務所をやめる! さらに、兄に対してもボロクソに言う。キャラクターとしては立っているのだけど、共感できるか、というと……っていう部分はある。
そして、冒頭に書いたような形になって始まる物語。犯人に財産を譲る、という話ではあるが、そこには、彼が持つ会社の株式も。残された者にとっては、会社の株を誰に渡すのか? という選定でもある。そんな中での駆け引き。かと思えば、その中で発生する(本当の)殺人事件。さらに、実の兄の浮気騒動……。次々と新たな展開、新たな方向へ、と目まぐるしく描かれるものが変わって言って、どこへ着地するのかわからない。その部分が何よりもの魅力じゃないかな、と思う。先に、ちょっと否定的に書いたけれども、主人公・麗子の強烈なキャラクターと、どこへ向かうのかわからない予測不能な展開に酔いしれることが出来た。
ただ、それが長所でもあり、短所でもある、と言う感じはするかな? とも感じた。
つまり、法律に関する話なのかな? と思えば、一族の中のアレコレになってみたり、かと思えば、人間の生きる意味は、みたいな話になってみたりとなり、色々と詰め込まれているけど、どれもちょっと中途半端な感じにも思える部分があるため。そこが引っ掛かる人は、評価を下げる、っていう部分にもなるんじゃないかと思う(特に、本書の場合、著者が実際に弁護士である、なんていうのを表に出しているから余計に)
でも、あんまり専門的なこととかを考えずに、純粋にエンタメ作品として楽しめたので、自分としては十分にアリな作品。

No.5821

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

スポンサーサイト



Tag:小説感想新川帆立『このミス』大賞

COMMENT 0