著者:支倉凍砂

聖クルザ騎士団の窮地を救ったコルとミューリ。彼らの絆と騎士としての誇りを知った二人は、二人だけの騎士団を結成する。そんな中、ハイランドから依頼されたのは、麦の一大生産地・ラポネルの調査。荒れ地で会った土地を一代で麦の産地へ変えた前領主は悪魔と取引をしているのでは、という噂があるというのだが……
あとがきでも触れられているけど、結構、前巻から間が空いたなぁ……(しかも、自分も購入してから読むまで、それなりに期間が開いたし)
今回は、一代で、麦の産地を作り出したノードストンについての調査。ただの荒れ地でしかなかった土地を、豊かな穀倉地帯に変えたのは、悪魔との取引があったから? しかも、領主を退いた今、新大陸の発見やら、大して価値のない鉱物の輸入などをしているという。それこそが、悪魔との取引の証拠だ、とすら言われているのだが……
しかし、ラポネルの街を訪れたコルとミューリが感じたのは、悪魔との取引とは正反対の、徹底的に計算されつくした農場。そのような人物が、異端の考えを持っているとは思えない。そして、いざ、話を聞けば、ある錬金術師の協力を得て、試行錯誤の末に農地を作り出した、という過去の話。その上で、領主の座を退いた彼は、その錬金術師があると言っていた西の大陸を目指したい、という思いだった。そして、そのために作った船、その実験が、領地を騒がせている幽霊船騒動の原因であることも説明をされる。
物語の発端となった国と教会の争い。それは、長きにわたる戦争のために、教会が作り出した税が原因。エーブに言わせれば、理屈ではなく、感情の争いとなっているそれを解決するためには、新たな土地、新たな大陸がある、というのは魅力的。協力……とまでは行かないものの、口添えくらいは、と言った中、その幽霊船を調べる中で新たな疑惑が浮かび上がり……
ミューリ、その母・ホロの存在が、教会という立場からは異端そのものではあるけど、これまでの物語で、異端の存在というのは多くて1巻に1人くらいだった本シリーズ。しかし、今巻は、これまでのエピソードで登場したキャラクターが一挙に登場し、そういう意味ではお祭りのような状態。ただ、その中で、ノードストンが秘めていた意思の強さに。戦争により、領地を喪った一族と、男を喪った一族の双方を引き継いだノードストン。貧しい状況から脱するために、必死に働き、その中で感じた錬金術師、異形の存在との交流。ある意味では異端との交流かも知れない。しかし、神への冒涜などとはまた違った、ただの純粋な想い。だからこそ、コルは、そんなノードストンを守りたいと思うのだが……
こう考えた場合に、コルのように、人間以外の、神話の世界からの存在を知っている人間というのは貴重な存在と言うのがわかる。そして、そんな存在だからこそ、教会の在り方とか、そういうものについても平等な目で……。そういう存在の必要性というか、そういう存在がいるからこそ新たな面へ、という一歩が進んでいくのだ、というのをちょっと思ったりした。で、これって、会社などのような組織についても言えるんじゃないか、とも。
No.5825

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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聖クルザ騎士団の窮地を救ったコルとミューリ。彼らの絆と騎士としての誇りを知った二人は、二人だけの騎士団を結成する。そんな中、ハイランドから依頼されたのは、麦の一大生産地・ラポネルの調査。荒れ地で会った土地を一代で麦の産地へ変えた前領主は悪魔と取引をしているのでは、という噂があるというのだが……
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今回は、一代で、麦の産地を作り出したノードストンについての調査。ただの荒れ地でしかなかった土地を、豊かな穀倉地帯に変えたのは、悪魔との取引があったから? しかも、領主を退いた今、新大陸の発見やら、大して価値のない鉱物の輸入などをしているという。それこそが、悪魔との取引の証拠だ、とすら言われているのだが……
しかし、ラポネルの街を訪れたコルとミューリが感じたのは、悪魔との取引とは正反対の、徹底的に計算されつくした農場。そのような人物が、異端の考えを持っているとは思えない。そして、いざ、話を聞けば、ある錬金術師の協力を得て、試行錯誤の末に農地を作り出した、という過去の話。その上で、領主の座を退いた彼は、その錬金術師があると言っていた西の大陸を目指したい、という思いだった。そして、そのために作った船、その実験が、領地を騒がせている幽霊船騒動の原因であることも説明をされる。
物語の発端となった国と教会の争い。それは、長きにわたる戦争のために、教会が作り出した税が原因。エーブに言わせれば、理屈ではなく、感情の争いとなっているそれを解決するためには、新たな土地、新たな大陸がある、というのは魅力的。協力……とまでは行かないものの、口添えくらいは、と言った中、その幽霊船を調べる中で新たな疑惑が浮かび上がり……
ミューリ、その母・ホロの存在が、教会という立場からは異端そのものではあるけど、これまでの物語で、異端の存在というのは多くて1巻に1人くらいだった本シリーズ。しかし、今巻は、これまでのエピソードで登場したキャラクターが一挙に登場し、そういう意味ではお祭りのような状態。ただ、その中で、ノードストンが秘めていた意思の強さに。戦争により、領地を喪った一族と、男を喪った一族の双方を引き継いだノードストン。貧しい状況から脱するために、必死に働き、その中で感じた錬金術師、異形の存在との交流。ある意味では異端との交流かも知れない。しかし、神への冒涜などとはまた違った、ただの純粋な想い。だからこそ、コルは、そんなノードストンを守りたいと思うのだが……
こう考えた場合に、コルのように、人間以外の、神話の世界からの存在を知っている人間というのは貴重な存在と言うのがわかる。そして、そんな存在だからこそ、教会の在り方とか、そういうものについても平等な目で……。そういう存在の必要性というか、そういう存在がいるからこそ新たな面へ、という一歩が進んでいくのだ、というのをちょっと思ったりした。で、これって、会社などのような組織についても言えるんじゃないか、とも。
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