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六人の嘘つきな大学生

著者:浅倉秋成



人気SNSサービスを展開するスピラリンクス社。そこが初めて行う新卒採用。その最終選考に残った6人に通知されたのは、一つのチームを作り上げ、グループディスカッションをせよ、というもの。その最終選考に残った波多野祥吾は、他の候補との交流を重ねるが、最終選考直前、その課題は変更される。「六人の中から一人の内定者を決める」という課題について議論を重ねる中、それぞれについての告発文が発見されて……
物語は、第1章で、祥吾の視点で綴られるその就職試験の様子。そして、その間に挟まれた、当時の参加者のインタビューという構成。そして、その試験の顛末が描かれたのち、第2章で、そのインタビューを実施した人物が、そのインタビューなどを元に真相を探る、という形になっている。
最終選考の中で登場する告発文。「〇〇は、××をしていた!」 それぞれが、誰がふさわしいか、を投票するシステム。しかし、その告発文が出るたびに、その対象とされた人物への不信感が増し状況が一変していく。しかし、告発文を読まないわけにはいかない。なぜなら、途中でやめれば、告発された人物が不利になるから。そして、その告発が続く中、誰がその犯人なのか、という犯人探しが進んでいくが……
読んでいて何よりも思うのは、「就活って何やねん」って感じかなぁ。
就職活動が始まる、となると一斉に動き出す学生たち。何のためだかよくわからない「マナー」を守ることが推奨され、会社に少しでもアピールすべく、自らが何をしているのか、というのを誇張を交えて語りだす。そして、ある意味で付け焼刃な会社の情報を仕入れ、一方、先行する側もそんな情報の中からある意味で、感覚だけで「この人と、この人」などと選んでいく。無論、ネガティヴな情報は致命傷ともなり得る。学生側は、何をすればよいのか、よくわからないまま、真偽すら危うい情報に踊らされ、採用する側もまた同様。一体、何のためにそれをするのか?
勿論、企業とすれば、新しい従業員を迎え入れねばならない。それはそう。しかし、その選考過程に意味はあるのか?
そんな問いと、犯人は誰かを巡る疑惑。その結末としての犯人の動機は、まさにそんなアレコレをストレートに示したものであるように感じる。そして、その上で感じたのは……
就職活動って何だ? 何の意味があるんだ? と思いつつ、しかし、それが終わることもまた、ないのだろうなぁ……というのも。

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Tag:小説感想浅倉秋成

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