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あと十五秒で死ぬ

著者:榊林銘



第12回ミステリー新人賞佳作の『十五秒』など、「15秒」を題材とした4編を収録した短編集。
一言で言えば、滅茶苦茶トリッキーな設定の作品ばかり! と言う感じだろうか。
例えば、表題作……に近いであろう『十五秒』。気づくと目の前に、空中に浮いている銃弾。周囲には赤黒い飛沫がまとわりつき、自分の胸に開いた黒穴から噴き出している。そして、そんなところに現れた男は、自分が死んだことを告げる。絶命まで15秒。その間に相手を告発し、反撃する手段を考えることに……
この時点でかなりトリッキーでしょ? 15秒と言っても、リアルタイムシミュレーションゲームとかみたいに、コマンド指示中は時間が止まる。なので、その間に何をするのか考えることが出来る。犯人は誰なのか? それは、これまでの経緯から予想がつく。実際、その通りだった。では……。男は、告発などを、というのだけど、告発にとどまらず、相手への反撃。しかも、相討ちというか、相手を殺してやろう……くらいの勢いになっていくのが楽しい。主人公、メッチャ好戦的なんだもん。そして、皮肉な結末。謎解き、とは違うのだけど、トリッキーな中での攻防戦と、そこである種のギャグに見えてくる展開が楽しかった。
究極レベルでトリッキーなのは、4編目『首が取れても死なない僕らの首無殺人事件』。
孤島の村、赤兎島。この島に住む人々は、なぜか首が外れやすい。しかし、首が取れても15秒以内に体につければ死なずに済む、という特異体質を持っている。そんな村の祭、鶴首祭。それを見に来ていた少年・克人は、その帰路、何者かに襲われて首が外れてしまう。このままでは……そう思った矢先、幼馴染の公が現れ、二人で首の入れ替えをして何とか生き延びるのだが、その間、島では殺人、窃盗という事件が起きていて……
もうさ……首が外れやすい。首が外れても、15秒以内にくっつければ生きていられる……って設定からしておかしいでしょ?(誉め言葉のつもり)
ただ、そんな設定を活かしての窃盗、殺人の謎解き。首が外れても……なんていう設定だから、こういうことも出来る、というのは前半で色々と読者もわかるわけで、その中でどうすればこの不可解な状況が作れるのかを考える、というのはしっかりと本格モノの形をとっており、フェアな形に仕上がっている。シュールだけど。そして、その上での結末……。うん、完全にギャグになった気がする。
かなりクセの強い作品集であることは確かで、人によってはぶん投げたくなるかも。でも、こういうの、嫌いじゃない。

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Tag:小説感想榊林銘

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