著者:北山猛邦

優れた推理力を持つが、人一倍、引っ込み思案な音野順が難事件の謎を解く連作短編集。全4編。
シリーズ第3作。
え~っと、前作を読んだのが2010年だったので、実に10年ぶり。刊行された時期で言うと11年ぶりという物凄い間隔を経て刊行されただけに、ちょっと細かいところは記憶が曖昧になっていたり。読んでいるうちに、何となく思い出したけれども。
1編目『人形の村』。語り部である白瀬の友人であるオカルト雑誌記者・旗屋が語った不可思議な出来事。オカルト雑誌に来た手紙にあったのは、髪が伸びる人形について。手紙の送り主に会った旗屋は、実際にその人形を見に行くが、長時間に渡って監視することを要求され、その結果、人形を貰った挙句に10万円の謝礼を貰う、と言う不可思議なこととなった、という……
著者と言うと、まず「物理トリック」を思い浮かべるのだけど、この話については音野が安楽椅子探偵として謎を解く形で、事件も心理トリックという形での事件。まぁ、確かに音野の推理の通りだとすると筋は通る。そして、だとすると……と言う感じで後味の悪さが残る。ただ、かなり綱渡りのやり方だな、というのを何よりも思ったりはする。
そして、表題作である2編目。全300頁ほどの本作の中で、半分以上の150頁余りの分量がこのエピソード。
「祭の夜 金塊をいただく」 怪盗マゼランを名乗る者から、そんな予告状が届いた。しかし、一部の人しか知らないが、その金塊は偽物で、金銭的な価値は全くない。だから、本来、盗まれても問題はない。それでも警備のために村へ赴く音野と白瀬。祭の夜、村で起きたのは窃盗ではなくて、殺人事件で……
先に書いたように、分量的には短めの長編作品くらいのこのエピソード。事件に入る前に、村の湖では、音もなく高速で進む舟が目撃されたりと、不可思議なことが。そして、殺人現場には鍵がかけられており、その鍵は、遠く離れた別の場所に……。メイントリックは、著者らしい、と感じるような物理トリック。そして、その周辺でのアレコレ……。トリックの鮮やかさ、しかし、その一方での犯人の想い。犯人側に感情移入して……という音野の苦悩というのもまた理解できるように感じた。
そんな事件の後遺症もあって、引きこもり状態になった音野。そんなところに、再び同じ村から依頼がくる4編目『マッシー再び』。
これもまた、物理トリックではあるのだけど、それ以上に、白瀬の想い、っていうのが印象深い。言葉面はキツいかも知れないけど、でも、その能力とかを評価し、埋もれさせるのは……。そんな思いが伝わってくる。
No.5839

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この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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シリーズ第3作。
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1編目『人形の村』。語り部である白瀬の友人であるオカルト雑誌記者・旗屋が語った不可思議な出来事。オカルト雑誌に来た手紙にあったのは、髪が伸びる人形について。手紙の送り主に会った旗屋は、実際にその人形を見に行くが、長時間に渡って監視することを要求され、その結果、人形を貰った挙句に10万円の謝礼を貰う、と言う不可思議なこととなった、という……
著者と言うと、まず「物理トリック」を思い浮かべるのだけど、この話については音野が安楽椅子探偵として謎を解く形で、事件も心理トリックという形での事件。まぁ、確かに音野の推理の通りだとすると筋は通る。そして、だとすると……と言う感じで後味の悪さが残る。ただ、かなり綱渡りのやり方だな、というのを何よりも思ったりはする。
そして、表題作である2編目。全300頁ほどの本作の中で、半分以上の150頁余りの分量がこのエピソード。
「祭の夜 金塊をいただく」 怪盗マゼランを名乗る者から、そんな予告状が届いた。しかし、一部の人しか知らないが、その金塊は偽物で、金銭的な価値は全くない。だから、本来、盗まれても問題はない。それでも警備のために村へ赴く音野と白瀬。祭の夜、村で起きたのは窃盗ではなくて、殺人事件で……
先に書いたように、分量的には短めの長編作品くらいのこのエピソード。事件に入る前に、村の湖では、音もなく高速で進む舟が目撃されたりと、不可思議なことが。そして、殺人現場には鍵がかけられており、その鍵は、遠く離れた別の場所に……。メイントリックは、著者らしい、と感じるような物理トリック。そして、その周辺でのアレコレ……。トリックの鮮やかさ、しかし、その一方での犯人の想い。犯人側に感情移入して……という音野の苦悩というのもまた理解できるように感じた。
そんな事件の後遺症もあって、引きこもり状態になった音野。そんなところに、再び同じ村から依頼がくる4編目『マッシー再び』。
これもまた、物理トリックではあるのだけど、それ以上に、白瀬の想い、っていうのが印象深い。言葉面はキツいかも知れないけど、でも、その能力とかを評価し、埋もれさせるのは……。そんな思いが伝わってくる。
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