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アリバイ崩し承ります

著者:大山誠一郎



刑事課に所属する新米刑事の僕は、久々の休暇で出かけた先で、腕時計の電池切れに気付いた。商店街にある美谷時計店に駆け込んだ僕だったが、そこにはなぜか「アリバイ崩し承ります」という張り紙が。僕は、現在関わっている事件について、店主の時乃に相談することにして……
と言う形で始まる連作短編集。全7編を収録。
著者の作品を読むのは、実に12年ぶり。著者の印象として、本格モノを書く作家さん、というイメージだったのだけど、その定番の一つであるアリバイトリックに特化した作品集。かなり攻めた作品だな、というのを思う。
作品の中で印象的だったのはまず1編目の『時計屋探偵とストーカーのアリバイ』。大学教授が殺害された。そして、容疑者として浮かび上がったのは、被害者の元夫である菊谷という男。菊谷は、元妻を付け回し、金をせびるなどの行為を続けていた。ところが、殺害されたと思しき時間、菊谷は居酒屋にいた、というアリバイがあって……
被害者の教授が、殺された当日に行っていた行動。その中の、ちょっとした、奇妙な行為。その辺りの違和感と、殺害された時刻がいつなのか? と言う部分を中心に考察し、そして、文字通りの意外な結末。アリバイトリックというと、例えば、時刻表トリックみたいなものとかもあるけど、事件の構図そのものを完全にひっくり返す話というのが何よりも印象的だった。
多少、無理は感じつつも……というのは、3編目『時計屋探偵と死者のアリバイ』。道路に飛び出し、車に引かれて死亡した推理作家の奥山。その奥山は、死の直前「人を殺した」と告白。果たして、その住所では女性の遺体が……。だが、事件が起きた時刻の前に、奥山は自宅で宅配便を受け取っており、殺害現場である女性の自宅まで行くことは不可能。推理作家である奥山は、どういうトリックを使ったのか?
これは、そもそも、アリバイトリックなのか? という疑問はある。告白しているにもかかわらず、なぜか成立しているトリック。その謎は魅力的。真相の意外性も確かにあった。ただ、アリバイ崩し、ではないような気がしないでもない……
この作品の中で、個人的に好きなのは5編目『時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ』。アリバイ崩しをする時乃。そんな技術、思考を教えたのは、時計店の先代店主であり、祖父であるという。そんな祖父が、時乃に出したアリバイ崩しの問題。それは?
3時25分に祖父がとめた店内の時計。その時刻が「犯行時間」。しかし、丁度同じ時刻に一駅離れた広場で撮られた写真がある。勿論、写真に加工などはしていない。それはどうやって?
広場の時計がどういうものなのか? 写真の構図の不可解さ。そういうものから……というトリックは「なるほど!」という感じ。でも、それ以上に、そのトリックを実行している光景を考えると微笑ましい。ハッキリ言って、これもかなりの力技のトリック。でも、自分がやっていたことを自分もやりたい、という孫がうれしくて、ついつい張り切ってしまった……というような状況が頭に思い浮かぶ。殺人とかがある中、癒しとも言える状況が良かった。
全体を見回すと、アリバイ崩し、とは言え、物理的なトリックとかよりも、謎をこねくり回して、と言う感じの話が多かったかな? ちょっと予想していたのとは違った感じのトリックが多かった気はする。でも、それはそれで楽しかった。

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Tag:小説感想大山誠一郎

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