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クライム・プランナー

著者:翔田寛



渋谷の「のんべい横丁」で、ホットドッグとビールのみの店のマスターをする大柳の元へ届いた一報。それは、友人であるメイテンこと、塙明展が血まみれで高速道に放置されていた、というもの。しかも、その事件を巡って刑事、さらに、ヤクザまでもが周囲に現れる。そして、思い起こすのは、3年前まで行っていたクライム・プランナーとしての活動……
現代版・必殺仕事人、て……
正直なところ、物語の配分がおかしくないか? という感じがする。
物語は、冒頭に書いたような形で開始。が、友人というか、仲間であったメイテンが血まみれ、意識不明で高速道で発見され、色々な存在が大柳の周囲に現れた……という導入が終わると、いきなり物語は大柳の少年時代に。不良にイジメられていた友人を救おうとして策を練ったが、しかし、という苦い思い出。さらに、時間が経過。大柳が経営する工務店が危機に陥り、最後の最後に梯子を外された。抗議に乗り込もうとしたところで、出会った同じように理不尽な想いをした二人の男女。上司のパワハラの末に解雇されたメイテン。そして、結婚詐欺師に騙された小春。
大柳は3人で、その加害者。さらに、大柳の父の財産を奪った詐欺師に対する復讐を計画する。
いや、自分で直接は手を下さず、悪人同士を上手く誘導し、互いに破滅させる。そのために計画を練り……という辺りは面白い。なんか、一般人のはずの大柳、メイテン、小春が突如、その道の専門家みたいになってしまう点に違和感がないわけじゃないのだけど、これはこれでアリ。ただ、相手は悪党ではあるのだけど、社会のために、とかじゃなくて、私怨を晴らすため、なんだよな……
そして、そんなやり取りの末、刑事に目を付けられた、という部分も含めて目的は完了。活動は終わった……というのが3年前。この時点で、物語の分量の3分の2くらいも終了。冒頭で示されたメイテンの事件がなぜ、とか、そういうところへ入るのだけど……
正直なところ、物凄く駆け足展開。しかも、大柳自身は、あまりその調査に関わらず、久々に連絡を取った小春が一人で活躍して、というような形に。延々と続いた過去の物語が、その事件に関わっているのか、というとそこもあまり関係ないという……。
物語途中の過去話とか、面白い部分もあったのだけど、1冊の作品としてはどうしても不満が残る。現代パートなしで、過去の事件だけで1つの作品位でも良かったんじゃないかな? と言う気がしてならなかった。

No.5849

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Tag:小説感想翔田寛

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