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俺がピエロでなにが悪い!

著者:白井ムク



「イッツ、ショータイム!」 ストリート・パフォーマーを夢見て、練習に励む樹。ボランティアでホスピタル・クラウンをする彼が気になっているのは、一人、笑ってくれない少女・茉莉のこと。そんなある日、その病院で、クラスのギャル・市川愛莉とニアミスしてしまう。ボッチの樹、リア充の愛莉。相性最悪だった二人だが、席替えで隣の席になったことで、樹は愛莉の勉強を見ることになって……
第9回講談社ラノベ文庫新人賞佳作作品。
いや、凄くまっすぐな作品だな! というのをまず思った。
冒頭に書いたように、特待生になるくらい勉強ができるが、学校ではボッチ。そして、大学には行かず、パフォーマーとなることを夢見る樹。一方、リア充グループで、授業などを休むことも多く、ある意味で問題児扱いの愛莉。その二人が勉強会をすることとなって、真正面から互いのことを知って……。その辺りを、凄くまっすぐに描いている作品だと思う。
そして、そんな中で樹が知るのは、茉莉は、愛莉の妹である、ということ。そして、樹の前では全く笑わないけれども、実は樹の訪問をすごく楽しみにしていること。でも、そんな茉莉は難病にかかっており苦しい状態である、ということ……
勿論、樹は、自分がピエロとして病院に行っていることは周囲に秘密。それどころか、自分がそこへ進みたい、というのを学校にすら秘密にし、進路指導ですら何も書かない。その辺りも、何かわかるんだよな……。別に恥じるようなことではないけど、それを言うことで、変に注目されるのは嫌だし。これって、ある意味では自分で自分に自信を持っていない? なんていう部分もあるかも知れないし、また、学校と言う世界で、そういう異端分子みたいなものになる、というのも避けたい。この辺りの気持ちとかもわかる気がする。
一方で、愛莉の方も、当初は問題児的な扱いであったけれども、根は真面目。そして、何よりも妹のことを愛している、というのがわかってたところで、その茉莉の容態が……
ここまでのまっすぐな交流から期待されるものをしっかりと受け手の樹の行動も格好良かった。また、愛莉の勉強を見るように指示した担任の先生の思惑とか、そういうのも含めて、登場人物が皆、嫌味のない、それぞれをしっかりと思っている存在で、読み終わって、凄くスッキリする形で締めてくれたのも満足を覚えた。

No.5860

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