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ラスプーチンの庭

著者:中山七里



腎臓に病を抱える娘・沙耶香の見舞いに訪れた犬養は、同様の病で入院している庄野祐樹という少年を知る。長い闘病生活をしていた彼は、家庭の事情もあり、自宅療養に切り替えるとして退院していく。だが、その一か月後、祐樹は急死。葬儀の場で、犬養は、彼の遺体に奇妙な痣があることを発見する。虐待か、と思われたのだが、両親の様子におかしな点はない。そんな矢先、今度は癌に侵され、長きにわたる闘病生活を送っていた女性が自殺。その遺体にも同様の痣があって……
犬養シリーズの一作。
中盤までは面白かったのだけど、最後に失速したなぁ、という印象。
冒頭で書いた通り、犬養が知り合った、娘と似た病を持った少年の死。死因自体は病死で事件性なし、とされたものの、痣の存在など違和感は拭えない。そして、自殺として処理された女性の身体にも同様の痣……。どちらも、死因は別。しかし、共通点が……。一人、調査に乗り出した犬養が発見した共通点は、民間医療を標榜する団体のパンフレット。その主催者は……
主催者である織田豊水という男。ハンガリーの医大を卒業し、国立病院に勤めたのち、その団体を作ったとされている。しかし、その経歴などを調べると、全て嘘。全くの医学の素人であり、経歴詐称そのもの。しかも、その治療などを受けていた遺族は、彼を詐欺師として告訴する意思はないという……
実際には詐欺でしかない行為。しかし、遺族は、「やれることはやった」という満足感を得ている。しかも、病院に入院し、高額な医療費を払いながらも状況は変わらなかった、という思いを抱いている相手にとっては……。客観的に見て、どう考えても詐欺。しかし、医療の現場に不満を抱いている存在にとっては……という問題提起は確かに、と思わされる部分がある(もっとも、織田のやり方について、医師法違反にも問えない、というのは本当なのかな? とも思える。申し訳ないが、著者の法律知識にはかなり疑問を抱いているので)
ただ、後半、癌での闘病をしていたアイドルが、織田の治療で完治した。さらに、政治家も……という流れ、さらに、その中でのアレコレと、織田が殺されて……という展開はかなり雑な印象。アイドルの完治云々についてのアレコレは、正直なところ、ページ数稼ぎの印象があるし、結末にも無関係。さらに、物語冒頭である人物の話があるので、大体のところは予測がつく上に、その人物の描写とかは酷く雑。
中盤までは惹きつけられただけに、どうしても、まとめの雑さが引っ掛かった。

No.5867

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